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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(8)

IT教育コンサルタント 芦屋 広太(プロフィール

 あなたはヒューマン・マネジメント能力に自信をもっているだろうか? マネジメントで最も難しい"人間の問題"、これにうまく対処しなくては仕事の成功はない。"人を動かすためには何が必要か"を理解し、適切に行動しなければならない。
 前回は「3つのコントロール」について説明した。

(1)ミッションを正しく与えること。→ミッション・コントロール
(2)モチベーションを維持させること。→モチベーション・コントロール
(3)行動のインセンティブを与えること。→インセンティブ・コントロール

 また、今後具体的にヒューマン・マネジメントを説明していくために、共通して使う事例のヘッドラインを示した。今回は、3つのコントロールの第一歩である「(1)ミッション・コントロール」について説明していきたい。
 
 ●ミッションを理解させる


 ヒューマン・マネジメントで重要なのはミッションを正しく認識させることである。仕事には達成すべき目標があり、これが「ミッション」である。行動の源泉にあるのはミッションだから、ミッションを正しく認識できていなければ目標は達成できない。通常、ミッションはリーダーやマネージャーが正しくメンバーに認識させる必要があるが、これを行わなかったり、曖昧に伝える場合も多い。ミッションは正しく認識させ、常に再認識させること。これがヒューマン・マネジメントの基本となる。
 しかし現実の業務では、さまざまな要素が複雑に絡み、メンバーのミッション認識ができなかったり、最初は強いミッション認識をもっていたが、次第に認識が弱まることも多い。このように、環境の変化で人間の気持ちは変化することを重要事項として考えることがミッション・コントロールの基本となる。

 
 ●ミッションは個人とチームに与える


 筆者は、ミッションは個人とチームに与えることが重要であると考えている。どちらか一方にしか与えないのはよくないと考えている。
 なかには、チームに曖昧なミッションを与え、個人に強いミッションを与えるリーダーやマネージャーがいる。しかし、個人のミッションだけが強いと、チームメンバー同士のミッションが乖離し、バラバラになる恐れがある。ミッションを最終的に理解し、行動するのは個人である。個人の解釈の違いでチームとしてのミッションがバラバラになるのは適切ではないだろう。
 そこで、チームのミッション、個人のミッションの一貫性を最初によく考え、メンバーに理解させていくことが必要になる。

 
 ●特定の個人だけにミッションを与えるのは避ける。


 また、特定のメンバーだけに強いミッションを与えるのは避けたい。例えば、優秀な個人A君にだけ強いミッションを与え、チームやほかのメンバーに明確なミッションを与えない場合、A君の行動をほかのメンバーが助けないことも多い。優秀だからといって、特定の人間だけに強いミッションを与えてしまうとほかのメンバーの嫉妬も生むのである。非常に子供っぽい話なのだが、現実に組織の不具合はこういうところから発生するので注意が必要だ。

 
 ●事例

 では、事例を使って実際のミッション・コントロールを説明しよう。
(前回までのあらすじ)
 筆者は以前A社の人事システムの改善を担当した。A社の人事システムは、セールスマンの業績評価・給与計算を行うもので、10年以上の保守を重ねた結果、頻繁に誤計算などのシステム障害を繰り返すようになっていた。A社ではこの事態を問題視し、再三、システム部に改善命令を行ったがうまくいかなかった。このシステムの管理者の山下とメンバーの人間関係も悪化し、メンタル面でも非常に大きな問題に発展している状況であった。

 筆者がシステム改善に出向いたときに最も気を使ったのは「メンバーの仲間」になることである。所詮、筆者はメンバーと同じ気持ちを共有できない。頑張っても頑張ってずっと責められ続けたメンバーは、ある意味被害者としての仲間意識が強い。
 これに対し、筆者は外から監査人的立場で入ってきた人間と思われていた。だから、メンバー達は「芦屋とは同じ気持ちは共有できない」という雰囲気があった。これは赴任後数日一緒に過ごした感想である。ヒアリングをしても、正直な気持ちは出てこない。話をしてもうわの空。これが最初の印象だった。
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