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特集1:画一的コンテンツとしてのeラーニングからテーラーメイドへ eラーニングに求められる機能の変化を考える
株式会社インストラクショナル デザイン 代表取締役 中原 孝子
プロフィール
 「政府の5ヵ年計画の終了とともにeラーニングのブームも終了した感がある」と、株式会社ネクストエデュケーションシンクのメールマガジン『NET通信』(8月9日配信 Vol.047)の「君爺の新教育学談義(9)」にも指摘がありました。確かにひところのようにeラーニングを大きく扱うような展示会や会合などはなくなりましたが、eラーニングが、学習の一つの形態として浸透し、真新しさがなくなったことが、「ブームの終わり」を感じさせるものになっていると思います。定着・発展期としてのより一層の充実が必要とされるのがこれからなのでしょう。同コラムにもあったように、企業教育においては、より一層現場のニーズに密着したコンテンツが求められてきているのが現状と思われます。将来的には、さらにタイムリーで個人のスキルギャップにフォーカスした効率的な学習提供が必要となり、eラーニングのコンテンツの提供者にも、また、人材教育担当者にも、より一層インストラクショナルデザインの考え方に基づいた学習プランニングやコンテンツ構成スキルが求められてくるのではないでしょうか。

 多様なニーズへの対応が可能な構成になっていることがeラーニングによる学習の有利な点の一つででもあるのですが、それが可能なインストラクショナルデザインが施されていない場合、提供されているコンテンツについて、すでにある程度学習内容についての知識があるような受講者にとっては、ある意味ムダな時間を学習に費やさなければならない状況が生じてしまったり、学習意欲の維持が大変だったりする場合もあると考えられます。また、汎用コンテンツでは、個人の学習をサポートするのに限界があったり、現場や企業特有のニーズへの対応がむずかしかったりします。より効率的な人材の育成と学習意欲の維持、そして個々人のパフォーマンス実現のためには、必要とされるスキルギャップを見極めたうえでの学習の提供が必要となってきます。つまり、eラーニングにも、汎用性のあるコンテンツの再構成などによるカスタマイズやパーソナライズの実現をサポートする機能が求められ、ブレンディングが一層進むことによって、eラーニングの管理だけではないLMSの重要性が増してくると考えられます。また、現場でのOJTを効率的にサポートするための機能も求められてくるでしょう。
 つまり、今後のeラーニングには、単に効率的で安価な学習機会の提供という役割だけではなく、企業の組織としてのニーズと個人のパフォーマンスをサポートする機能としての役割に、より一層重要度が増していくと考えられます。

■HRM/HCM*とLMSの連携


 企業のニーズと個人に要求される組織のニーズを、コンピテンシーベースをもとに人材の育成を図る人材マネジメント手法も広がりを見せているようです。コンピテンシーマネジメント手法も、一定の集団に対して一括して提供されてきた従来の階層別教育から、個人に求められるコンピテンシーの要素を明らかにした上での研修の提供を必要とするようになります。これには、キャリアマネジメントも含めた個々人の研修記録やスキルの記録、パフォーマンスの記録も含めた、人材マネジメントシステムとラーニングマネジメントシステムの統合が要求されてきます。
 また、LMS(Learning Management System:いわゆる学習管理システムで、eラーニングのためのインフラ的役割を果たすもの)には、単にeラーニングの管理だけではなく、集合研修やOJTでの進展なども履歴としてバックアップできるようなトータルな学習管理機能が求められますし、個々人のパフォーマンスをフォーカスすることによって複雑になる人材開発部門のオペレーション上の負担を軽減するためにも、研修評価をサポートするアンケート機能や、集合研修の開催日やキャンセル情報などを自動的に受講者に対してE-メールを配信したり、アンケート結果を自動集計したりするような機能も重要な要素になるのではないでしょうか。

*HRM/HCM…HRM (Human Resource Management System)/HCM (Human Capital Management System)  単に、学習管理などだけではなく、企業における人事情報を統合し、個々人のキャリアパスやスキル特定などとともに、人材開発プログラムとの連携を図ろうとしているシステム。ここでのHRM/HCMは、単なる人事情報や給与管理システムではなく、むしろパフォマンス目標を明確にするための人材管理・人材評価などをサポートするためのシステムをさしています。
 

■スキルギャップの見極めと効率的ブレンディングの提供


 仕事に要求されるスキル要件のデータ(基本的なスキルセット)に対して、何が基礎的・汎用的なスキル要件で、何が特有のスキルなのかを分類し、管理できる機能を付加した場合、仕事が求める能力要件と、個々人のギャップの見極めが容易になるでしょう。これらのスキルセットを明確にすることは、個人のスキルギャップに注目した効率的な研修の提供が可能になるだけではなく、どのスキルに対してどれくらいの研修をeラーニングで提供し、何を集合研修で提供し、何をOJTで提供するのかといったパフォーマンス目標に注目したより適切な研修方法の組み合わせをプランするための指標も提供してくれます。結果として、研修効果の向上も期待できるのではないでしょうか。
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