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特集4:独創的な人材育成施策と人事評価制度でIT人材の人間力を向上!サンネット株式会社「『育つ社員』のつくり方」セミナー取材
 「育つ社員」のつくり方 Point4

  ・さまざまな経験の場をより多く
    1. 経営への参画(結果が業績に連動)
    2. 自らの工夫とアイディアを活かす場
    3. リーダーシップとコミュニケーション
 「経験の場」は、いろんな種類をできるだけ多く与える方が、より効果的です。そのための施策が、第二のサンネット独自の施策「社内プロジェクト活動」です。

 経営課題の解決を社員自ら計画し、実行して成果を出す活動です。例えば、社員の資格取得率を高めるために、社員の資格取得支援するプロジェクト「資格取得プロジェクト」など、毎期10以上のプロジェクトチームを発足させ、全社員がいずれかのチームに所属して活動しています。各プロジェクトのテーマはすべて何らかの形で業績に連動するものであり、本人にも会社にも効果が得られます。

 活動にはできるだけ自由度を与え、工夫やアイディアを活かせるようにします。社員全員が参加し、職場や年齢、経験を超えた社員でチームを組むので、社内コミュニケーションの活性化も図られ、お互いにいろいろな情報も交換できます。業務の現場ではなかなかリーダー経験を積めない若手社員も、この活動ではリーダーに立候補できますので、この活動を通じてリーダーシップやコミュニケーション、チームワークも養えます。

 リーダーに選ばれると、メンバの活動成果の評価を行うので、他人を評価する、という経験も積む事が出来、優秀なマネジメント層の育成へと自然につながっていきます。
 「育つ社員」のつくり方 Point5

  ・社外との交流の機会
    1.「井の中の蛙」にならないために
    2.「世間の広さ」を思い知る
    3. ベンチマーキング
 第三のサンネット独自の施策は「人脈作り活動」です。社員が社外活動、団体活動に参加することを奨励しています。

 社外に出て、業種や業界、職種や年齢、経験などが異なるさまざまな人物と会話や交流をすることで、視野が広がります。これが「人間力」の向上に繋がります。人脈のネットワークを数多く持っていると、業務上の問題解決に社外の力をお借りすることも可能になります。その経験を生かすことで、お客様との間にパートナシップや信頼関係を育て、人間関係を大事にする心が芽生えます。

 また、自分よりもレベルの高い人に接することで、客観的に自分のレベルに気づき、さらなるレベルアップの努力をするようになります。特に優秀な社員ほど、社外との交流の機会を与えることで世間の広さを認識し、社外を知ることによって、いろいろな「気づき」を得ます。それが将来ハイレベルIT人材を目指す上で貴重な経験となるはずです。

 また、構築した人脈は、将来的に効果的な営業活動に繋がり、企業規模の拡大にも寄与する可能性を秘めています(以上については、サンネット社刊「ソフトウェア企業は人材育成なくして生き残れない」に詳しい)。

 このようにして育成した社員は、どうやって「評価」すればいいのでしょうか?

 ITスキルの評価は、スキル標準が存在しますが、それだけでは足りません。社員を評価する重要なポイントは、以下の3点です。

 1.ITスキル以外を独自に定義
 2.ビジネスに沿った明確な評価基準
 3.納得性と公平性の高い評価制度

 これらを網羅した人事評価制度の一例を紹介します。
 「育つ社員」のつくり方 Point6

  ・評価と育成のための組織作り
    1. 長期的視点に立った評価・育成組織
    2. 業績優先に偏らない仕掛け
    3. 評価者と社員の人数バランス
 業務上の上司が部下の能力向上のための育成責任も担うのが一般的ですが、ともすれば目の前の業績目標達成を優先して業績に直結する能力開発にばかり気を取られ、気づかぬうちに長期的な能力開発の視点を忘れてしまうことにもなりかねません。

 このような弊害を回避するため、業務上の上司とは別に、能力評価と能力開発に責任を持つ評価者を別に置く、多重組織の形態をサンネットでは取っています。これにより、業績優先に偏らずに育成・評価が行えるようになります。多重組織には弊害もあるのですが、それを軽減する工夫を一方では続けています。

 能力開発と育成のために、個人面談を二ヶ月置きに実施しており、それを可能とするため、評価者と社員の人数バランスを一定レベルに抑えるようにしています。また、人事評価委員会を設置し、評価者の評価レベルの統一化、評価制度の改善、評価者の指導・育成も行っています。

 評価と育成を効果的にするためには、組織形態もさまざまな工夫が必要になります。
 「育つ社員」のつくり方 Point7

  ・評価基準の明確化
    1. 知識・技術の継承を評価する
    2. 段階的な成長のルートを定義する
    3. 事業戦略の範囲内で個性を生かす
 成長する社員を正確に評価するためには、明確な評価基準が必要です。

 サンネットでは900項目以上の評価項目を定義し、職種やレベルのよってそのうちのどれで評価するか、明確に決めています。一人あたりの平均で約50項目程度の能力評価項目で評価します。その統一した基準として、「知っている。独力で出来る」レベルではなく「それを教えられる。指導できる」というレベルを求めています。これによって、自然と社員の誰もが後輩や同僚にスキルを継承することが当たり前の風土が出来上がりました。

 職種やレベルは、ITSSのキャリアフレームワークと同様のキャリアパス体系を独自に定義し、段階的な成長度を明確に測れるようになっています。最終的な目標とは別に、中間目標がはっきりしていることで、社員が成長の課程を実感できるのです。職種の異動は、ある一定の条件内で本人の希望を生かせるので、事業戦略の範囲内で社員の個性を活かせる工夫もしています。

 本人の希望をある程度叶えられる融通性を持ち、本人が自分の成長を自覚できるような明確な評価基準が、社員の成長意欲を促進し、それが育成の原動力として大きく作用します。
 「育つ社員」のつくり方 Point8

  ・評価が育成のスタートライン
    1. 成長の事実を共有する
    2. 自分で課題を認識する
    3. 課題克服の行動計画を共有する
 評価は必ず自己評価と上司評価を面談の席でつき合わせ、双方納得の上で評価結果を出します。この面談の席で、@成長した事実を自分で認識し、A更にレベルを上げるための課題を自覚し、Bその課題を克服するための行動計画を立案する、それが不可欠です。上司から一方的に評価を伝えるのではなく、自分で自分の現状を正確に把握し、もう一段レベルアップするための行動を自分で決める。それが成長には最も大事です。

 それを支え、導くのが、評価者であり育成者である上司の重要な使命です。
 「育つ社員」のつくり方 Point9

  ・納得性の高い報酬制度
    1. 成長すれば報酬も上がる
    2. オープンな給与体系
    3. 「異議申し立て」による評価再検討
 成長した社員には、その成長に見合った額が報酬として支給されます。能力評価のレベルによって月次給与を決めるのです。そのルールは、評価基準と給与テーブルと一緒に公開されます。評価基準の統一と公正性の審査のために評価委員会が存在しますが、上司との面談で評価が決まれば、基本的には自働的に給与が決まります。しかし、もしその評価結果に不満があれば、直接人事評価委員会に異議申し立てをすることが可能です。

 社員にとっては、成長した証として納得性の高い報酬制度を組み合わせることが、社員の成長意欲を持続させるためにも効果的です。
 「育つ社員」のつくり方 Point10

  ・業績貢献が報酬に連動
    1. 事業戦略にリンクした個々人の業績目標
    2. 目標以外の貢献も評価
    3. 公平な分配制度
 業績評価は、能力評価とは完全に切り離し、目標管理制度によってポイント化した業績貢献度によって公平に賞与を分配します。

 目標管理制度で最も重要なのは、目標設定です。その目標が本人の能力レベルや役割に見合っていることと、組織の業績目標と連動していることが必須です。また、目標に挙げていなかった別の面でも業績に貢献した場合には、その分も加点して評価することも大事です。賞与の分配計算式にも工夫し、公平な分配がなされます。

 個人の業績目標達成が組織の業績目標達成に貢献し、その結果、賞与の分配が増える、という構造が、社員のモチベーションの維持・向上に寄与し、企業としての業績向上にもつながります(以上については、サンネット社刊「情報処理企業のためのキャリアパスによる人材育成・人事評価運用と実践」に詳しい)。


■まとめ

 紹介した事例は一例ですが、各社の実情に合わせた各社各様の仕組があると思います。しかし、どのような仕組を作り上げようと、仕組だけでは人材育成の効果は出ません。

 「評価者」は同時に「育成者」であり、「評価」と「育成」という重要な役割を担う立場のマネジメント層が、真剣に社員と向き合い、常にコミュニケーションを密に取り、一緒に階段を登っていくように互いに成長していくことが必要です。評価し育成する立場のマネジメント層が、非常に重要な役割を果たすのです。その負荷は決して低くはありません。しかし、それだけの価値があることなのです。マネジメント層がどれだけ真剣に「評価」と「育成」に取り組むか、それが最も重要な鍵を握ります。

 そもそも、「人材育成」は何のためのものでしょう。

 社員が育ち、その成果をお客様に対するサービスの向上に活かして初めて意味があります。そのサービスの向上によってお客様に喜んでいただき、その結果、業績が向上して会社が発展し、それは社員への報酬や達成感となって返ってきます。「お客様」と「社員」と「会社」の3者が、みなHAPPYになるための手段として「人材育成」が必要なのではないでしょうか。
 島川様は、以上の2点を熱意を持って参加者に訴え締めくくられました。「eラーニング編集部」としても、「人材育成における大切なこと」の核として、「みながHAPPYになる」ことなのだということを再認識したセミナーでした。




■島川 孝博氏(Takahiro Shimakawa)プロフィール
島川孝博氏 サンネット株式会社コンサルティング事業部 ゼネラルマネージャー。プロジェクトマネージャーとして数々の大規模プロジェクトを成功へと導く中で、人材育成の大切さに気づき、社内の人材育成に尽力。社内の人材育成だけでなく、JUAS人材育成部会のメンバとしてUISS改善ワーキンググループのメンバとしても活躍中。

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