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特集1:平田周の「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」第3回 個人主義と集団主義の狭間で
三田教育研究所首席研究員 平田 周(プロフィール
 個の意識
 自分というものを意識するようになるのは、近代を特徴づけるものの一つであるが、もともと個人主義的社会・文化の傾向を持つ欧米とは異なる発展をわが国は遂げてきた。とかく集団の中に個を埋没させる、あるいは集団そのものを個に置き換えるという点で欧米社会とも、中国や韓国、東南アジアとも異なる背景がある。
 「わが社」というように、社員の多くが会社をマイ・カンパニーのように思っているのはわが国特有で外国にはない。事実、会社は家族のようなものだとされてきた。だから、会社は仕事に満足できなくても、苦しみに満ちていようとも、それはみんなのためであり、ひいては自分のためという思いがあった。それは、欧米のように、組織や組織の所有者に支配され、労働を強いられるものではない。個人の力が個人のものとして明確に評価されなくても、自分を組織に置き換えて見ることができる。欧米人にとっては、きわめてわかりにくい性質のものである。これが日本的な企業の姿、本質とされ、美徳だとも主張されてきた。

 集団性
 もともと日本人は群れをなす性質を持つ。みんなと同じように行動することに快適さを見いだす。日本人が群れる性質のある犬に似ているとすれば、欧米人は単独行動を主にする猫のような存在といえる。これは、遺伝的に刷り込まれた性質だろうと思われる。  したがって、もっと個性を出せ、集団主義から脱却せよと、いくら改革を呼びかけてみても、簡単には変わらない。
 集団主義は、戦争における歩兵軍団のように、戦域によっては大きな力を発揮してきた。戦後、わが国が経済的に大きな発展を遂げてきた要因としてこのことを排除するわけにはいかない。1社が石油化学コンビナートをつくれば、他社もこれに追従する。それにより規模の拡大と技術面、コスト面での競争を生み、互いに切磋琢磨して成長していった。電子機器においても同様のことが起きた。欧米では、ある会社が新しいことを始めれば、もはやチャンスはないと見て進出をあきらめてしまう傾向が強い。日本人はその逆で、他社がやるならわが社もということになり、意思決定の有力な要因になる。このような傾向は、海外旅行やファッションなど個人あるいは家庭レベルでも起きる。それがいいとか、いけないということではなく、日本人はそういう行動性向を持っているのだと思う。

 揺らいできた集団主義
 国内、海外において競争において企業間の競争が激化し、産業構造が変化するにつれ、集団主義は力を失いはじめた。戦争になぞらえれば、歩兵中心から艦船、さらには航空機へと破壊力が移っていったのに似ている。状況の急速な変化に迅速な対応をするには、大きな集団は適性を欠く。
 そのために、企業経営において、欧米的な手法が次第にわが国でも取り入れられるようになった。構成員の個々の効率化を図ることが全体の生産性を向上させるのに不可欠だった。また、情報技術の発展は、誰もが同じ情報源に同時にアクセスすることを可能にし、情報の流れが高速化され、情報伝達のヒエラルキーが崩壊した。組織は、情報の流れの秩序に支えられていたの である。
 戦後、わが国の先端工業技術は欧米からのライセンスを基にし、それを改良、多様化させるかたちで発展してきた。しかし、それが限界に近づくや創造性が強く求められるようになった。それは欧米とて同じである。そのためには、個性のある、特殊技術を持つ人材が求められるようになり、集団主義を別の面から崩壊させる要因になった。ジェネラリストよりもスペシャリストが重視される時代に変わっていった。

 
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