
はじめに
DXや生成AI関連の用語をニュースサイトなどで見かける機会が増えました。一方で、「聞いたことはあるけれど、人に説明できるほどは分かってはいない」と感じている方も多いのではないでしょうか。本連載では、DXビジネス検定のシラバス改訂で新たに登場する重要キーワードを取り上げ、専門用語をできるだけ使わず、身近な仕事や日常の生活を題材に解説していきます。目指すのは、用語を覚えることではなく、「自分の言葉で説明できる」状態になること。一見、難しそうに思えるDXや生成AIを理解していく入口として、この連載を活用していただければと思います。
連載第1回のテーマは「AIエージェント」です。耳にする機会は増えましたが、「生成AIと何が違うのか」をすっきり説明できる方は、まだ多くありません。ここが整理できると、次に出てくるRAGやMCPも理解しやすくなります。単なる意味を覚えるのではなく、仕事のやり方がどう変わるのか、という視点で捉えると理解しやすいかと思います。
AIエージェントとは何か
生成AIは、チャット形式で使用することが多いと思います。その使い方では、こちらが発した質問に対して答えを返してくれます。文章作成や要約、アイデア出しが得意で、問いを与えると答えを返し、資料の叩き台作りなどをしてくれます。
一方でAIエージェントは、ユーザーが目的を伝えるとそこから自分で半自動的に動きます。情報収集、比較、判断材料の整理、提案の整形まで進めます。必要ならプロンプトによる指示なしに外部ツールも使い、提案をまとめます。

ポイントは、AIエージェントも生成AIだという点です。新しい種類のAIが登場したというよりも、ユーザー側の生成AIの使い方が変わったもので、「生成AIが人に指示をされなくても自律的に動く概念」としてとらえると良いと思います。
・生成AI→質問ごとにアウトプットを返す
・AIエージェント→目的を共有し、複数のアウトプットを組み合わせながら仕事を進める 生成AIは「質問に答える相手」として使われ、AIエージェントは「目的達成に向けて一緒に仕事を前に進める相手」と言えます。
AIエージェントはどこがいいのか
仕事を進めるにはその一つひとつの作業や判断などを、人が生成AIにその都度確認して進めるのは効率的ではありません。それよりも仕事の最初から最後まで、人が関与せず進んでいく方が効率的です。AIエージェントは、最初に人から指示された条件を把握し、仕事を最後まで自律的に進めていくように動きます。この動きが人の代理のように見えることから「AIエージェント」と呼ばれます。
身近な事例 「旅行先を選ぶAIエージェント」
AIエージェントが「仕事を自律的にどのように進めているか」ということが分かる事例として、旅行先を選ぶ場面を考えます。
旅行は、予算、日程、同行者、移動時間、天候、宿や食事など、多くの条件を踏まえて判断します。正解が一つに決まらない、典型的な事例です。
AIエージェントに目的と条件を伝えると、必要な前提を確認し、複数の候補を比較したうえで、「今回はこの選択が最も適している」と理由付きで結果を示します。さらに、次に取るべき行動案まで提示します。候補を出すだけでなく、判断と次の行動を一体で示す。これがAIエージェントの特徴です。
これは趣味の旅行先決定だけでなく、仕事でも同様です。例えば仕事としての営業提案、採用、商品企画も同じであり、正解が一つでない業務ほど向いているといえます。
生成AIとAIエージェントの違い
生成AIは、質問に対して答えを出す使い方が基本です。段取りは人が考えます。
AIエージェントは、段取りを自ら考えながら仕事を進めます。情報を集め、比較し、判断材料を整理したうえで、次に取るべき行動まで示します。
・生成AI→指示待ち型。考えるための補助。
・AIエージェント→目的駆動型。仕事を進めるための代理役。 生成AIからAIエージェントにAIの使い方が広がることで、それを使う側の人の役割も変わりました。「作業を細かく指示する」から、「目的や条件を指示し、結果を見て最終判断を担う」へと移ったのです。
まとめ
AIエージェントは生成AIの活用の仕方が広がったものです。仕事を分解し、情報を集め整理し、一定の判断まで自律的に進められるようになった生成AIです。営業提案、採用、問い合わせ対応、研修設計など、条件が多く判断が難しい仕事ほど真価を発揮します。
ただし条件が曖昧だと結果も曖昧になります。レベルの高い結果は、レベルの高い指示、明確な前提条件から生まれます。人がやるべきことは、明確な目的設定と制約条件の整理、そして最終判断です。AIに委ねる部分と人が担う部分の線引きが、DXを現場で上手く進める近道になります。
ポイント
AIエージェントは目的達成のために自律的に動く。
目的→確認→比較→決定→行動案の提示、が基本の流れ
人の役割は、作業確認指示から目的・条件提示と結果を踏まえた最終判断へ
■いつもの単発の質問→回答で終わらせず、まず「ゴール(何をいつまでに)」と「制約条件」を短く整理してAIに渡してみてください。
■その上でAIに、前提確認→進め方→たたき台→次の一手まで一括提案させ、条件を足してもう一巡。この繰り返しで、かなりエージェントに変化していくと思います。最終判断は人が行う、という点も気を付けながら試してみましょう。

DXビジネスアンバサダー
岸 晶子
きし あきこ
都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。
