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特集2:あなたが変える!”仕事”の意識を変革する連載 会社を動かすコンサルタント思考術(7)
 まず「ネット社会」では、消費者自らが商品情報をインターネットで検索し、利便性の高いネット通販で容易に価格を比較しながら、実際に商品に触れずに購入しているという事実に着目できるかがポイントです。ところで、昨今マーケティングの重要性が強調されている背景をあなたは説明できますか? 昔は商品を作れば売れた時代がありました。それは「モノ不足時代」の話です。現在は新商品が続々発売され、消費者は多くの商品に日々囲まれており、むしろ商品情報の波にのまれている「モノあまり時代」です。よって単に商品を作れば売れるといった時代は終焉しており、数ある商品の中からいかに消費者に選んでもらえるかが勝負の分かれ目となっています。つまり、一方的に売るSelling(販売)思考ではなく、消費者に選んでもらうMarketing(売れる仕組み作り)思考の重要性が叫ばれているのです。Selling(販売)は思考の起点が「商品」にあるのに対して、Marketing(売れる仕組み作り)は思考の起点が「顧客」にあるのが決定的な違いです。顧客ニーズを把握し、商品差別化のためのポジショニングを決め、商品コンセプトに落としていく。その後、商品開発、価格決定、流通チャネルと宣伝方法を検討していきます。しかしながら、インターネットの普及した「情報化社会」ではこの流れに変化が起きました。つまり、商品を実際に確かめずに購入するネット通販の急激な増加に象徴されるとおり、「宣伝」の重要性が急速に増しているのです。従来マーケティング・テキストで語られている4P、つまり、Product、Price、Place、Promotionの優先順位が急速に変化してしまいました。商品よりもその「情報」に触れる機会が圧倒的に多い消費者、Productの差別化が益々難しくなる「モノあまり時代」の中で、いかに商品価値を伝えるかの「Promotion」が勝負の分かれ目なのです。情報が顧客に差別性を持って十分伝わるか。つまり、成功するマーケティングを考える上で、従来の4Pの思考の流れを「逆発想」で捉える視点が重要となります。まずは宣伝を考え、次に商品を開発していく一連の思考の流れです。

 宣伝で最も重要なのは、キャッチコピーです。伝える価値を消費者の心に刺さる一言に凝縮する。つまり、このキャッチコピーを最初に考えてしまおうというのが成功するマーケティングの秘訣です。もちろん技術志向の会社ではキャッチコピーから考えていくようなマーケティングは難しいかもしれません。しかし、商品開発が比較的容易な業種では本当に有効な思考方法です。キャッチコピーを最初に考えるということは、伝えたいターゲット顧客を明確にイメージし、そのターゲットの心に一番印象付けられる言葉を決めていく必要があります。そして、商品がまだ開発されていなくても、広告だけで予約が取れるぐらい強力なコピーが作れれば、あとはそのコピーどおりの商品を作っていけば確実に売れるわけです。すでにターゲット顧客や宣伝のためのキー・メッセージが明確化されていますから、商品開発後はスムーズに販売活動に入っていけます。

 じつはこのような発想は、消費者が商品に触れる機会よりも情報に触れる機会の方が圧倒的に多い「情報化社会」のマーケティングの本質を深くみつめていくと見えてくるものです。顧客が商品を購入しようと思うきっかけはなんでしょう。益々成長するネット通販で成功する秘訣とは。

 実際にキャッチコピーから始めるマーケティング思考を実践して成功している企業があります。化粧品メーカーの「エクスボーテ」という会社です。この会社は「女優肌」という女性の心に刺さる非常にキャッチーで効能がダイレクトに伝わるコピーをまず考え、その後コピーを具現化する製品開発を行いました。ハイビジョンカメラのアップにも耐えられる「女優のようなきめ細かい肌を演出できるファンデーション」を売り言葉に売上を急速に拡大させています。まさに4Pの逆発想を実践しているマーケティング企業事例と言えます。

 上記のような思考パターンで考えると、マーケティングの精度・実行力が確実にアップします。「モノあまり&情報化時代」には、顧客の心に刺さるPromotionが売上向上のカギであることを分かって頂けたかと思います。また、このような思考方法はあなたの日常の仕事にも全く同様に活かすことができるのです。上司の心に刺さるキャッチコピーを考え、仕事を仕上げていく……。今回の業務事例で言うと、「一目で分かるメールの件名を書くこと」です。別の言い方をすれば、キャッチーな言葉の「有言実行」です。ここでは、有言の内容にこだわることが重要なポイントでしたよね。下記に実際の思考の流れをまとめてみましたので、再度確認して日々の仕事にも応用してみてください。


【思考の流れ】

(1)情報収集
「モノ不足時代」から「モノあまり時代」への変化
インターネットを代表とした「情報化社会」の到来

(2)整理・分析
マーケティング4P、Product、Price、Place、Promotionの優先順位の変化を捉える

(3)統合・解決策の導出
ターゲット顧客の心に刺さるキャッチコピーの創造
キャッチコピーを具現化する商品の開発

(4)プレゼンテーション
キャッチコピーを「伝える」ことを最も重視したマーケティングの実施



■小泉 雅史(Masafumi Koizumi)氏プロフィール
小泉雅史氏 カリフォルニア大学アーバイン校 経営大学院卒業(MBA)
ブランドハンドバッグメーカーにおける商品開発・営業を経て、日本IBMに入社。ビジネスイノベーションサービス(現 IBM ビジネスコンサルティング サービス)戦略グループに在籍し、大手企業を中心としたさまざまな戦略・業務・システム関連のコンサルティングに従事。
その後、大手化粧品メーカー経営戦略室にて全社成長戦略の策定等を手がけ、 現在は、ベンチャー企業の取締役及び経営コンサルタントとして活躍中。

 
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