eラーニングマガジンに関するお問合せ、ご質問等は下記までご連絡ください。
eラーニングマガジン編集部

elmag2@nextet.net

特集2:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(13)
 ●ミッション、ニーズの整理

 これらが一般的なシステム開発の人間関係である。これらを考慮した上で、それぞれのミッションや基礎的な考えをまとめると以下のようになる。

<各立場のミッション、ニーズ>
(1)利用部門
機能的に充足した使い勝手のよいシステムを納期までに作ってもらいたい。
金銭にはあまりこだわらない。追加の場合は、システム部門がどうにかしてくれると思っている。
納期は遅れるのは嫌だが、遅れるのはベンダーのせいだと思っている。
(2)システム部門
適切な機能で納期までに、予算範囲内でシステムを作ってほしい。
予算超過はありえない。
コンプライアンス遵守、税務上など未検収調達や企業会計上の不備がないようにしたい。
(3)ベンダー
予算超過させたくない。
工期に遅れることはできない。
システム開発に必要な利用者の責任(要件提示、レビュー参加、仕様確定承認)を確実にしてほしい。
要望は、窓口で取りまとめてほしい。


 通常のシステム開発でも、立場の違う人達のミッションや要望はこのように多岐に渡る。
 したがって、これらの三者の利害を調整する立場の人がいないとシステム開発は頓挫するリスクをもつことを理解してほしい。筆者は、情報システム部門でシステム企画、プロジェクト管理を担当していたので、この三者の利害関係は奥の奥まで理解している。そのような人間が調整しなければシステム開発プロジェクトを成功させるのは難しいのである。
 失敗するケースは、企業側が無知、無関心で、金だけ出せばシステムを構築してもらえると勘違いしているケースである。このような状態だと、ベンダーのプロジェクトマネージャーは大変苦労することになる。これが、日本的システム開発プロジェクトの典型例であり、多くの動かないシステムができてしまった理由である。
 システム開発を成功させたいなら、企業側が本気でマネジメントしなくてはならない。利用部門にマネジメントを求めるのは、知識的、経験的に困難である。したがって、企業の情報システム部門から人を出し、企業側のプロジェクトマネージャーまたはマネージメントスタッフとして、企業内の利害調整とベンダーのプロジェクトマネージャー、営業担当者との利害調整を行わなくてはならない。
 このように、一般のシステム開発プロジェクトでさえ、考慮することは多く利害の調整が発生する。これを適切なヒューマン・マネジメントをしていくことが重要になる。
 では、次回は、具体的にどんなマネジメントをするのかを説明することにしたい。

■芦屋 広太(Asiya Kouta)氏プロフィール
芦屋広太氏 OFFICE ARON PLANNING代表。IT教育コンサルタント。SE、PM、システムアナリストとしてシステム開発を経験。優秀IT人材の思考・行動プロセスを心理学から説明した「ヒューマンスキル教育」をモデル化。日経コンピュータや書籍への発表、学生・社会人向けの講座・研修に活用している。著書に「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社)、「Dr芦屋のSE診断クリニック(翔泳社)」など。

サイト : http://www.a-ron.net/
ブログ : http://d.hatena.ne.jp/officearon/
連絡先 : clinic@a-ron.net

 
back
 
 

この記事の感想をお寄せください

お名前:
 (省略可)
メールアドレス:
 (省略可)
コメント:

Copyright©2005 Next Education Think.All Rights Reserved.
掲載の文章・画像の無断使用・無断転載を禁止します。
特集1:あなたが変える!”仕事”の意識を変革する連載 会社を動かすコンサルタントの思考術(8)
   
特集2:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(13)
(2)
   
特集3:ITSS研修ロードマップに沿った本格的なプロジェクトマネジメントeラーニングコース ソフト・リサーチ・センター「ITプロジェクトマネジメント実践講座」
   
特集4:主催:株式会社ネクストエデュケーションシンク 協賛:株式会社花絹/株式会社ワーク 第二回人財戦略セミナー「新卒・中途採用を成功させる人財採用セミナー」レポート