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特集1:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から U 「経験価値(Customer Experience Value)」が優先課題に
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(プロフィール
■"個客"を理解するマーケティング手法の問題とは

 ここ3年ほど前から、私は本を買ったり映画を観たりする方法がまったく変わりました。ネットで事前に確認してからそれをするようになったのです。何を確認するかというと「お薦め度」なのです。

 誰がいったいお薦めするかというと、私の知らないネット上での経験者達ですが、「★」印の数が示されて商品ごとにすぐわかりますね。その最高の成功モデルとしては、ネット書籍販売大手のアマゾンドットコムがあります。これは個々の購入履歴を分析して、同様な本を買っているほかの客から類推して自動的にお薦めするものです。

 こうした手法は、「ワン・ツー・ワン・マーケティング」と呼ばれて国内でも80年代より発展してきたものです。ところが、どういうわけかそのオピニオンリーダだったドンペパーズ氏はこのコトバを最近使わなくなりました。いったいどうしてでしょうか。

■"個客"から"顧客コミュニティ"への進化とCRM

 その原因はいくつかありますが、ひとつは"個別化"ということの意義がマーケティングで常識になったことです。ITの発達で顧客分析などコストもかけずに緻密にやれるようになりました。その結果として、個々の客に何が必要かを理解する仕組みが格段に向上し、あえて強調する必要がなくなってきたわけです。

 もうひとつは、顧客の"コミュニティ"という視点が重要になってきたこと。これは複数の顧客同士の交流や口コミの効果を理解するうえでキーとなるものですね。簡単に言えば"お仲間"です。

 つまり、図1にあるように、個人客との"1to1の関係"ではなく、コミュニティの中での顧客同士の絆や企業と顧客コミュニティとの"コミュニティの関係"がより重要になってきたということです。

 だからこそ、映画サイトのコミュニティで評価情報を確認する客が増え、それによって企業側の広告戦略も見直しが迫られているというわけです。

■顧客の「経験価値」がCRM実践のポイント!

 インターネット時代は顧客との関係がより複雑になってきます。ワン・ツー・ワンというのはその一部でしかないわけですね。例えば、仕事で外食するときにはスピーディな定食のほうが好まれるし、パーティでも共通のものを皆で食べる楽しみが重要となります。個客それぞれの好みに合わせること以上に、"スピード"や"皆で一緒に"といった「経験価値(Customer Experience Value)」が、今やマーケティング上の優先課題となってきたのです。

 図2にあるように、従来ビジネスではモノを売る「購買=ゴール」でした。売った後は営業マンにとってはアフターケアも付け足しごとでした。ところが、CRM型ビジネスでは「購買=スタート」とみなし、顧客の「経験価値」を"継続したサービス"として提供しつづけます。

 こうした"購買"についての考え方の違いは、いかに顧客と長くお付き合いしていくかという継続性を重視するCRM戦略(※「顧客生涯価値」)と裏腹にあります。だからこそ、トヨタなども自動車を10年に一度買ってもらった後は、「GAZOO」や「セカンドライフ」というWebサイトのコミュニティで、さまざまなサービスを受けてもらえるように力を入れ始めているといえます。


■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
匠 英一氏 デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
 現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
 著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:takuei@netlaputa.ne.jp

 
 

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