eラーニングマガジンに関するお問合せ、ご質問等は下記までご連絡ください。
eラーニングマガジン編集部

elmag2@nextet.net

特集1:〜見えてきた日本の課題 〜2005年ASTD International Conference最新レポート
 21世紀の企業での人材開発の機能を、Workplace Learning & Performance(WLP)と位置づけ、今後の数年間を見通した人材開発部門担当者に求められるコンピテンシーを発表した2004年とは違って、WLPの実践と維持・発展の年としてのテーマ設定と思われました。今年はそのコンピテンシーをもとに、またはそのコンピテンシーを定着発展させることが課題というのが今回の2005 ASTD International Conference and Expositionであったようです。





 
 ASTDプレジデントのTony Bingham氏の説明によると、Award受賞企業の選定基準が、「ラーニングによってビジネス結果をもたらしていること」。財務データを伴う明確な測定結果が示されていることが、選定基準の基本的な条件になっているということでした。
 これらの基準で選ばれた組織企業の中には、香港ポストを含む香港の企業2社が含まれていること。アジアの企業からの参加者の発表やネットワーキングセッションからも伺えることは、「ROI」や「研修評価」を単なるトレンドとして捉えがちで、研修のファイナンシャルインパクトを示してこなかった日本の企業における人材開発部門とのギャップの広がりでした。Tony Bingham氏が述べた今後の人材開発に求められる機能は、アジアでも定着しはじめており、人材開発におけるグローバル言語が、日本を除いて発展しているような印象を受けました。
  受賞企業一覧へのリンクはこちら

 キーワードは、"Connection to Business Strategy"(経営戦略とのリンク)と
"Measurement for Success"(成功結果をもたらすための測定)。その条件として人材開発部門に求められることは、以下の5点であると明言していました。

1.ビジネスパートナーとなること
2.組織の発展・改革のキーとしてのコンピテンシーを備えていること
3.リーダーシップの創造ができること
4.「財務の言語」を持つこと
5.ラーニングを通じて人々に高付加価値をもたらすこと

 セッション全般からも言えることですが、課題は「経営課題と人材開発プログラムとの整合性」。"Business Acumen" (ビジネスへの慧眼)が、今年度のASTDカンファレンスでのメッセージでした。

 経営課題を達成するための人材開発プログラムに求められるスキルやテクニックをテーマに、上記5点の実践例や実践のうえで必要となる知識やスキルが紹介されました。

 eラーニングという観点から言えば、セッション数は減りましたが、やはり独立したセッショントラックとして20セッションあり、人材開発や教育に使える新しいテクノロジーの観点から脱し、人材開発の1つの手段としての定着が感じられました。その導入の例などではなく、どのように活用できるのか、より有効な活用手段としての発表(より効果的なデザイン、OJTへの活用やブレンディング、コーチングへの応用、より効率的なLMSとパフォーマンス・マネジメントシステムの構築など)が主流を占めました。その中でも面白かったのは、Karl M.Kapp氏の " Client are from Mars, Venders are from Venus" と題したeラーニングベンダーと依頼者側である企業の人材開発部門との「言葉」の違いが引き起こす不和の解消についてのセッション。eラーニング業者には単なるテクノロジーとシステムの提供者ではなく、ビジネスストラテジーの一環としてのeラーニング(またはeラーニングではないかもしれないソリューションの提供)を望むクライアント企業。ビジネスパートナーとして、お互いにどのように理解を進めて、納得できるソリューションを実現するかを紹介していました。

 EXPOSITIONでは、やはり昨年度に引き続きThompson NetgやSkill Softなどのeラーニング関連の会社が大きなスポンサーとなっていましたが、セッションでの傾向と同じように、トレンドとしてのeラーニングから定着した手段として、クオリティーの追及や、同期型のセッションなども含めた、より多様性のある対応をソリューションとして提供してきていることでした。また、大きな特徴としては、HRM、HRDのアウトソース傾向に伴うLMSからHRMへの展開。パフォーマンスをサポートする機能としての充実を図ってきています。つまり、eラーニングに業界にも、単なるコンテンツの提供から、パフォーマンスサポートの観点からのソリューション提供が求められてきているということだと思われます。定着してきた結果のeラーニングのテクノロジーとして、さまざまな過去のコンテンツをオブジェクトごとに分解保存ができ、カスタマイズしたコースとして展開できるOutStart社のLCMS"Evolution"は、古いコースを活用し、より個々人、もしくは個々の事業グループのニーズに対応したコンテンツを提供したい企業にとっては、大変興味深く、さまざまな企画への汎用性も含めて注目したいシステムでした。

 今回のASTD参加から感じた日本での課題は、やはり「経営戦略との整合性」とパフォーマンスをサポートする機能としての人材開発プログラムであることを示すための「測定」プロセスの確立であると思いました。グローバル競争の中、人事部門に付属する研修のオペレーション機関としての人材開発部門から、「戦略」展開をする部門へのシフトが求められているといっても過言ではないでしょう。日本の多くの企業においても、人材開発プログラムと経営戦略とのリンクは語られてきましたが、人材開発を担う部門では、そのニーズをどのように把握し、どのように分析して、どのような成果として提示してきたでしょうか? 単なるイベントとしてのプログラムからビジネス成果を上げるための手段としての人材開発の展開をするための知識・スキルの充実がますます求められると思われます。

 弊社(株式会社インストラクショナル デザイン)でもさまざまな機会を通じて戦略的人材開発のための「分析」の仕方や「評価」のためのプロセスなどについてのセミナーやワークショップを展開しております。eラーニングの導入だけではなく、パフォーマンス管理やパフォーマンス改善のための効果的なOJT展開のためのプログラムなどの基盤にもなる"Human Performance Improvement"の考え方に基づいたスキルの普及をぜひ図っていきたいと考えております。予定されている公開セミナーなどもございますし、オンサイトでのワークショップやコンサルティングも可能ですので、ぜひネクストエデュケーションシンク社を通じてお問い合わせください。


【お問い合わせ先】
株式会社 ネクストエデュケーションシンク ソリューション営業部
〒113-0033 東京都文京区本郷 4-8-13 5TSKビル401
TEL: 03-5842-5148 FAX: 03-5842-5147
http://www.nextet.net E-mail: info@nextet.net

中原 孝子氏 プロフィール
中原 孝子氏 中原 孝子(なかはら こうこ)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。
その後、慶應義塾大学環境情報学部武藤研究室訪問研究員として、インターネットを利用したデータマインニングやeラーニングなどの研究に携わった。
職歴:米系製造販売会社、金融機関、IT企業にてトレーニングマネージャーとして活躍し、平成14年5月、株式会社インストラクショナル デザインを設立。
会員:ASTD会員、慶應義塾大学環境情報学部研究員
 
next
 
 

この記事の感想をお寄せください

お名前:
 (省略可)
メールアドレス:
 (省略可)
コメント:

Copyright©2005 Next Education Think.All Rights Reserved.
掲載の文章・画像の無断使用・無断転載を禁止します。
特集1:〜見えてきた日本の課題 〜2005年ASTD International Conference最新レポート
(2)
   
特集2:あなたが変える!”仕事”の意識を変革する連載 会社を動かすコンサルタント思考術(3)
   
特集3:eラーニングコース紹介 基本営業力の強化を目指す!「プロ営業になる為の基礎体力強化シリーズT、U」
   
特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(8)