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特集2:カッコ悪くて人間くさい人が幸せな勝ち組になる!異世代間コミュニケーションの能力開発 若年層教育編 最終回
株式会社自分楽研究所代表取締役、横須賀市生涯学習財団評議員
崎山 みゆき(プロフィール
 (1)新卒採用バブルに潜む大きな不安
 2007年以降から始まる団塊世代の大量定年退職や、バブル崩壊後の採用抑制などの影響で企業の人材不足がおこり、今年度の新卒採用は非常に明るい見通しになりました。

  日本経済新聞社の2006年度採用計画調査(最終集計)によると、大卒採用人数は05年度比23.9%増と、バブル期をしのぐ伸び率です。特に非製造業全体では29.5%増と、約3割です。

  しかし、安易に新卒採用バブルとは言い切れないようです。知名度の低い中小企業や、地方の製造業においては、採用難民と言う声も聞こえています。皆さんの会社はいかがですか? 皆さんの会社はいかがですか?

 ところで、この影響を受けて企業における若年層教育に変化が出てきました。「内定者教育」のニーズが増えているのです。他社にとられないための「囲い込み」です。特に数百人もの大量採用をしたIT企業や小売業では実施率が高くなっています。

  内容としては、業務説明に加えて、マネージメントゲームなどの、即戦化を狙ったものまであります。ちょっと聞くと、効果的ですが「卒業と同時に一人前のビジネスパーソンとなっていないと、落ちこぼれではないのか.」という不安を煽るマイナス点にも着目する事が必要です。同期の中から落ちこぼれたという感を持ってしまうでしょう。また、五月雨式採用といって、何度かに分けて採用試験を行い、そのグループで研修を実施しているところもあります。同期の中でも一次組、二次組、三次組・・・という状態になってしまい変な派閥?ができてしまったという事例もあります。

 さて、ここで危惧すべきことは、本テーマの「異世代間コミュニケーション能力」の低下です。第一回目でも触れましたが、新卒世代は幼少時代から同世代の人たちとのコミュニケーションを中心にしてきました。よって社会に出て最初にすべき事は、まず、違う世代の人たちとのかかわり方を学ぶ事です。しかし、内定者だけを集めた教育では、学生生活をそのまま引きずっているだけであり、学んでいる内容は社会人向けでも、メンバーに変化(世代や立場の違い)がなければ意味がありません。また、教育の「丸投げ」にも疑問があります。

  昨今では、人材教育のプロがさまざまなコンテンツを用意していますが、その導入の際に企業側も一緒になって考えたり、要望を出すことが肝心です。余談ですが、ある小売業で採用代行として一年で700万円支払ったものの、結局2名分の効果しかなく、担当者が社長に呼びだされてひどく叱られたという話を聞きました。専門業者だからという理由で、全て一任したそうですが、代行の中身はその会社のホームページと就職雑誌への掲載だけだったそうです。やはり、専門家といえども丸投げではなく、協働すべきです。

  そもそも内定時代に育て上げようということが間違いであり、入社してからという発想が大切です。最初から企画・提案などが完璧にできるはずがないのです。社歴もそこで働いている社員のことも知らないのに、熟練者のような企画などできるはずがありません。未熟なそれを凄いと感じるのは、本来であればできない事を平気で言ってしまうことに対する小気味のよさや面白さ、あるいは威勢のよさである事が多いはずです。
 
 (2)仕事を通じて伸ばす「異世代間コミュニケーション能力」
 第二回での若者の意見にあったように、異世代間コミュニケーションについての研修や講演会などは必要です。例えば、新入社員研修においては、管理職の方たちがかかわってきた仕事や新卒時代の話を取り入れる。そんなのは面白くないと考えるのは、当の中高年世代であり、案外と若年世代は関心をもっているものです。最初のお客様はどうやって契約までこぎつけたとか、上司に怒られたときにどうやって誤ったなどという、マニュアルにはない、且つ、自分だけの話が大切です。面白くないのは、自分の自慢話だからです。役に立つ話は歓迎されます。残念な事に、昨今では時間の無駄として削除している企業がとても増えました。しかし、その結果、若年層が企業の今しか見なくなりました。言い換えると仕事の結果だけをみて、プロセスを見なくなったのです。一方的な講義よりは、できれば同一テーマに対して座談会をする、ディベートをする、などもよいでしょう。人事担当者がファシリテーターをしてもよいのですが、公正で自由な場作りのためには、社外の専門家を活用する事も有効です。

 しかし、そのような機会を持つ事ができない職場ではどうしたらよいのでしょうか。答えは、仕事を通じて育てる、On the Job Training(OJT)しかありません。例えば、違う世代同士でプロジェクトチームを作ったり、先輩社員として面倒を見させるのは、1〜2年の差ではなく、思い切って5年程上の人をアドバイザーとしてつけてみます。これは、年上の人の方たちにも、基本を見直すよい機会になります。また、年上の方たちの存在は「マイルストーン」言い換えると「人生の置石」になります。つまり、自分の仕事をこうしてやっているとこうなるであろう、というモデルです。

  昨今、若年層の早期離職が増加していますが、その原因のひとつに、自分の将来像が見えないということがあげられています。異世代間コミュニケーションを通じて「マイルストーン」を拾えば、早期退職者が無くなります。特に女性社員の場合、出産・育児休暇をとっている先輩の存在は心強いものです。育児休暇で退職を選ぶのは、今までに事例がないので不安であるという理由が多いのです。先輩の体験談を階層別研修に取り込んだり、社内のSNS(参加者が互いに友人を紹介しあって、新たな友人関係を広げることを目的に開設 されたコミュニティ型のWebサイト)などを使って働き続けるということは、ひとつの能力です。企業家やフリーランスが脚光をあびていますが、私はひとつの企業に属して、組織を高めてゆくという働き方、生き方も素晴らしいと思います。特に女性の場合は、ライフイベントのリスクが男性以上に大きいので、継続雇用で自分のキャリアを高めるということがもっと持てはやされてもよいのではないのでしょうか。

  職場レクリエーションや行事をするゆとりがある場合は、これも高い効果があります。仕事以外の人間的な魅力を感じ取る能力を伸ばします。もちろん、社会人において、仕事の業績は大切な尺度です。しかし、それだけでしか人を見る事ができない人間というのは、どうでしょう。たまたま病気や怪我で休職した同僚や、スランプに陥っている上司を駄目な人間である、というレッテルを貼り付けるようになります。これでは、人はついてゆきません。なお「若い人はどうせ、社内行事を嫌がるに決まっている」というのは、中高年世代の誤解です。財団法人社会経済生産性本部の調査によると「会社の運動会などの親睦行事に参加したくない」という若年層は、1999年には29%でしたが、今年は17.3%にまで減少しています。私も、就職活動中の学生に聞いてみたところ、約八割がやってみたいと答え、その理由は、皆で何かやってみるのは面白そう、今まであまりやった事がない、でした。仙台市にあるIT企業では、社内イベントがチームワークを高めているという話を聞きました。この会社は平均年齢が30歳ほどで、経営者はアメリカ人男性です。もともと彼は幼稚園経営のプロでした。よってレクリエーションの活用がとても上手だということです。花見や社員の誕生日会などを楽しく盛り上げて、チームワークを強化しているということでした。
 
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