eラーニングマガジンに関するお問合せ、ご質問等は下記までご連絡ください。
eラーニングマガジン編集部

elmag2@nextet.net

特集1:小誌編集長 Mr.サイトウが直撃インタビュー! 日経HR服部光訓氏に聞く 就活を”社会人としてのコミュニケーション力可視化”から支援せよ!
服部光訓氏 ところが、今年に入って私自身が感じたのは、「内定後ミスマッチ」というものです。

Mr.サイトウ 内定後ミスマッチ……。

服部光訓氏 つまり、以前は"入社してからミスマッチに気づく"ということだったと思われるのです。一方、今年は、意外にたくさん内定をもらったのだけれども、入社する前に「何か合わないな」「何か違っているな」というふうに感じられて、いくつかの内定を辞退される方がたくさん見受けられました。これは新しい形のミスマッチではないかと考え、仮に「内定後ミスマッチ」と呼ぶことにしたのです。

Mr.サイトウ これは、学生、企業ともに大変な損失ですね。学生は少なくとも半年以上は一生懸命がんばって内定を取られた方が多いでしょうし……。企業側はもっと痛いですよね。相当な採用コストを投じているわけですから。

服部光訓氏 直観的に、こういう機会損失は防がなければならないと思いました。「入社後ミスマッチ」よりもある意味まずい。といいますのは、従来のミスマッチは「就職は狭き門」という中で起こっていました。今回は、人財争奪戦という風潮の中で、入社のハードルを下げている企業も結構あるのですが、新卒人財の水準を下げたくないということで、あえて「狭き門」としている企業も厳然としてあるのです。つまり、マクロの観点から見ると、以前よりも就職はしやすくなったのかもしれませんが、ミクロの観点、つまり個人の観点から見ると「"よりよい内定"をもらえる人ともらえない人の二極分化」が進むのではないかと思うのです。

Mr.サイトウ つまり、大きな視点から見れば就職はしやすくなったとしても、あるレイヤーではそうではない就職活動の現象が起こっているのではないかということですね。

服部光訓氏 そうです。一見チャンスは広がったように見えて、内情は違うのではないかと考えています。こういう現象を見たとき、つまり「内定後ミスマッチ」を見たときに、どうすればこのようなことがなくせるのか、何か効果的な対策はないかと編集部内で相当議論しました。ここで出た大きな結論が2つあります。1つ目は「自分とは何か」「自分は本当に何がやりたいのか」を真剣に考えたのかどうか、思索をしたのかどうかということです。2つ目は「企業のことをよく知ってほしい」ということでした。この2つを軸に考えています。その一環として、新しい機能をWebに構築しました。

Mr.サイトウ 具体的に教えていただけますか。

服部光訓氏 はい。1つ目は、「カードを使って自己分析を行うことができるプログラム」です。無料でダウンロードできますので、自分のマシンで実施して、それで周囲の意見もヒアリングできたらよいなと思って制作しました。2つ目は、「ミスマッチ診断」です。つまり、自分がやりたいと思っている仕事と、そのための(潜在的な)能力があるのか、価値観が合っているのかどうかの診断システムです。そして最後に、「コミュニケーション力診断」というものを構築したのです。これは入社前、入社後も大切で基本的な能力ですが、それがいまどの程度あるのか診断するということです。しかも、これは、学生の視点・コミュニケーション力ではなく"社会人として必要とされるコミュニケーション力"という観点で制作いたしました。著者には、「コミュニケーション力」について深いご見識のある、教育コンサルタントの芦屋広太氏にお願いしました。診断後は、的確なアドバイスが表示されるようになっています。

Mr.サイトウ それは画期的ですね。経済産業省などの調査によると、企業が新卒学生を採用する際に最も重要視しているスキルが「コミュニケーション力」といわれていますから。それにしても、現在の学生のコミュニケーション力というのは、実際のところどうなのでしょうか。

服部光訓氏 私の経験から申し上げますと、まず「何が言いたいのか」「何を伝えたいのか」ということが本人自身よくわかっていない。相談に乗っていても、ぜんぜんキャッチボールができないのです。いきなり泣き出してしまう方もいらっしゃいます。これには参りました。また、自己PRの強迫観念がある方がいらっしゃって、「自分はどこそこのサークルでどういったことをしてきました!」と、いきなり(しかも強引に)切り出される方がいます。相談に乗っているという局面なのに、いきなりデッドボールを投げられている感じです。また、あがり症の方も多く、「自分は何もできないんだ!」とまっしぐらに悲観主義に走ってしまう方もいらっしゃいます。つまり、総括すると支離滅裂です。

Mr.サイトウ そこで、今回「コミュニケーション力診断」というものを作ろうということのなったのですね。

服部光訓氏 はい。とりあえず客観的に自分がどのレベルにあるのかを可視化するのは意義があるかと思いました。そして、社会人へのステップとして、それが1つの道しるべというか、ガイドラインになればよいかと……。

Mr.サイトウ なるほど。

服部光訓氏 そこで何かしらのGapを感じ取ってもらい、ある種の「気づき」――社会人としてのコミュニケーションというのはこういうことをいうのかと、"学生のコミュニケーション"とは違うんだということを感じ取ってもらえればと思います。そして、真剣に「コミュニケーションとは何なのだろう」と考えてもらえれば嬉しいですね。

Mr.サイトウ そうですね。そうしたらすごい進歩ですね。さて、最後になりますが、経営者や人事部の方にメッセージをお願いします。

服部光訓氏 私見では、経営者や人事部の方も「コミュニケーション力」は落ちているように思います。PowerPointの普及のせいか、「提案力」というのは上がったような気がします。ですが、それは「コミュニケーション力」ではないと思います。基本的には一方通行ですから……。先ほど申し上げたとように「コミュニケーション」というのはキャッチボールです。プレゼンテーション中やその後に質疑応答をしたときに、質問に対してずれた回答をする方をよく見かけますね。

Mr.サイトウ 私もよくセミナーに出席するので、そういう場面に遭遇することがよくあります。「コミュニケーション」の本質とははたして何なのでしょうか。

服部光訓氏 なにも複雑なことはありません。「わからなかったら聞く」。そして、「伝わりましたでしょうか」と確認する。それだけのことです。言い方を変えると、お互いに歩み寄ることという態度や行為が大切なのだと思います。つまり「人間力」が重要になってくるのではないかと考えています。

Mr.サイトウ なるほど。しかし、「わからないことがわからない」という方もいらっしゃいますね。

服部光訓氏 そうですね。そういう場合は予習というか、なんらかの事前準備が必要ですね。しかし、「正しく質問ができる」「正しく疑問点を感じられる」という能力も重要です。そういうのも含めて、「人間力」なのではないかと思います。今後は「人間力」の問題にシフトして行くのかもしれませんね。結局、「コミュニケーション力」というのは「人間力」なのです。そういったことも含めながら一元的、総合的、複合的に皆様のためになるよりよい情報を提供していきたいと思います。

Mr.サイトウ 本日はどうもありがとうございました。
株式会社日経HR = http://www.nikkeihr.co.jp/
日経ナビ2008 = http://job.nikkei.co.jp/2008/



■服部 光訓(はっとりみつのり)氏プロフィール
服部 光訓氏 1949年、愛知県生まれ。1972年に早稲田大学法学部卒業後、日本経済新聞社に入社。新聞記者となる。自動車や電子・通信分野など、多くの企業取材を担当。その後、日経グループが出版している雑誌や、企業の人事・経営問題を扱う仕事に携わる。電子が得意という武器と、人材分野での経験を生かし、1998年に大学生向けの就職情報サイト「日経就職ナビ」(略称「日経ナビ」)を立ち上げ、初代編集長に就任。同時に、転職情報サイト「日経Bizキャリア」編集長を兼務。2002年に両サイトを日経人材情報という別会社へ移管し、2004年には同社取締役に就任。そして、2006年4月1日株式会社日経HRを立ち上げ、現同社取締役。

back
 
 

この記事の感想をお寄せください

お名前:
 (省略可)
メールアドレス:
 (省略可)
コメント:

Copyright©2006 Next Education Think.All Rights Reserved.
掲載の文章・画像の無断使用・無断転載を禁止します。
特集1:小誌編集長 Mr.サイトウが直撃インタビュー! 日経HR服部光訓氏に聞く 就活を”社会人としてのコミュニケーション力可視化”から支援せよ!
(2)
   
特集2:小誌編集長 Mr.サイトウが直撃インタビュー!日本のITに未来はあるのか。加速する受験生の「工学部離れ」を検証する。前編
   
特集3:ITプロフェッショナル人財を効率的・効果的に育成!中国サンネット キャリア形成支援システム「e-人財」
   
特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(21)