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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(28)

IT教育コンサルタント 芦屋 広太(プロフィール

 あなたはヒューマン・マネジメント能力に自信をもっているだろうか? マネジメントで最も難しい"人間の問題"、これにうまく対処しなくては仕事の成功はない。"人を動かすためには何が必要か"を理解し、適切に行動しなければならない。
 前回号では「プロジェクトマネジメントの考え方」の(5)の「問題は自ら判断し、処置する」に関する話として、「問題が発生または問題の兆候が現れたときの情報収集では、メンバーに対する考慮が必要になる」と説明した。
 
[プロジェクトマネジメントの考え方]
(1) できる方法を考える。
(2) できる人間を探す。
(3) その人間に方針を徹底し、動機付けを行う。
(4) 問題の兆候ができるだけ速くマネージャに届くようにする。
(5) 問題は自ら判断し、処置する。
(6) 再発しないように見直す。

PMの関与のポイント
メンバーを放置しない。
問題が起きた場合に叱責しない。
常に一緒に考える。
方向性を指示する。
問題が起こったときは一緒に解決する。

 つまり、「プロジェクトに何が起こっているか」を把握するための情報収集では、「メンバーを追い込まない」ことが重要である。正しい事実からしか正しい状況は推察できない。したがって、PMとして状況把握に必要なのは、メンバーなどの「情報ソース」から、正しい情報を収集する工夫なのである。

 そして、歪んでいない正しい事実を聞き出すには、「聴く相手」の責任を必要以上に問わないことである。結局、問題の責任は多くの場合PMにあり、他人を責めても状況が改善することはないのだから、叱らず怒らず、正しい情報が収集できるような工夫をした方が得策だ。

 つまり、メンバーを追い込んでも何もよくならない。プロジェクトを成功させたいなら、メンバーに配慮しながら、事実を抽出していかなくてはならないのだから。

 そこで、今回は、メンバーを追い込まずに、「事実を抽出していく」とはどういうことなのかを説明していきたい。

 ● 正しい情報を収集するには「メンバーを追い込まない」こと

 以下は前回紹介したやり取りであるが、日常的に見られることであるものの非常によくない事例である。PMはメンバーを追い込んで、反発を受けている。これでは正しい情報も収集できないし、メンバーとの信頼関係も損なう。

PM: 問題ではないのかな?
メンバー: 問題ではないです。
PM: 今は問題でなくても、これは早く処置するべきではないのか?
メンバー: 正常ですよ……。何が問題なのでしょうか?
PM: 正常かどうかもっと確認する必要があると言っているのだけども……。
メンバー: その必要はないですよ。
PM: どうしてそこまで言い切れるのかな?
メンバー: 私は信用されていないのでしょうか?
PM: そうではない。念のためだよ。
メンバー: とにかく、問題はないですよ。信用していないのなら、そう言ってほしいですが。
PM: ……。

 このPMは情報収集に失敗しているだけでなく、メンバーの信用を失うという大失敗をしている。人と人との関係はセンシティブだ。どんなに仲がよくても、信用されていないと思われれば、次第にメンバーの気持ちはPMから離れていく。

 一旦このような関係になると、コミュニケーションが阻害され、ますます情報収集がうまくいかなくなる。人は信頼している人には何でも話すが、嫌いな人や信頼していない人には驚くほど話をしなくなる。

 この「簡単な」基本原理を理解していなければ、PMとして、プロジェクトをマネジメントすることなどできないのだ。

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