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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(30)
 ● 非定型業務では「失敗」の恐怖がつきまとう

 このように、システム開発プロジェクトは非定型業務の連続である。そして、非定型業務では予期しない問題が起りやすいため、常に「解決できない」「失敗」のリスクがついてまわる。なぜなら、過去に発生していない問題の解決策はすぐには分からないからだ。

 だからこそ、解決にはメンバーの知恵がいる。一生懸命考え、苦しみながら問題を解決する強い気持ちが不可欠なのである。

 しかし、誰でもその気力、能力をもっているわけではない。当初、気力に満ちていたメンバーでも、何回も何回も問題に対処していれば、次第に気力が萎えてくるものだ。意欲が減退して、次第に無気力になっていくのである……。

 解決しても解決しても、後から新しい問題が出てくる。解決しても自分は楽にならない……。こんなことが、プロジェクト全体の推進力を削いで行くのである。

 ● 「一緒に行動する気持ち」がメンバーを動かす

 だからこそ、メンバーに元気を与える必要がある。では、彼・彼女らメンバーはどうすれば、萎えた気持ちを再び充実させて、気力を復活させるのか。それは、やはり、リーダーたるPMが一緒に考えてやることである。倒れたメンバーのかたわらに立ち、一緒に考える姿勢。それこそ、もっとも必要なPMの態度だと思う。

メンバー: リーダー、テストがうまく動いていません。これでは明日のユーザー操作評価会ができません。
PM: 何が問題なのか至急調査だ。それから、ユーザーには君から何とか問題ないように連絡しておけ。そうだ。先方の課長は細かいので注意してくれ。当方に問題がない形でうまくいってくれよ。
メンバー: ……。

メンバー: リーダー、テストがうまく動いていません。これでは明日のユーザー操作評価会ができません。
PM: 何が問題なのか至急調査だ。すぐ、会議室に集まってくれ。俺が指示を出す。まず、ユーザーに俺から連絡する。どういう内容がよいか考えるから、話をしよう。先方の課長は細かいので注意深く考えよう。当方に問題がないかたちでうまく言えれば最高だ。みんな俺に知恵をくれ。
メンバー: 了解です。すぐ集まりましょう。関係者に声をかけてきます。

 短い会話だが、この2例のプロジェクト推進力は雲泥の差であろう。前者は破綻のリスクがあり、後者は「成長する、考えることのできる強い組織」になる可能性が高い。これを分けるのは、リーダーたるPMが「一緒に考えるか否か」にかかっているのだ。

 次回は、「方向性を指示する」について説明する。


■芦屋 広太(Asiya Kouta)氏プロフィール
芦屋広太氏 OFFICE ARON PLANNING代表。IT教育コンサルタント。SE、PM、システムアナリストとしてシステム開発を経験。優秀IT人材の思考・行動プロセスを心理学から説明した「ヒューマンスキル教育」をモデル化。日経コンピュータや書籍への発表、学生・社会人向けの講座・研修に活用している。著書に「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社)、「Dr芦屋のSE診断クリニック(翔泳社)」など。

サイト : http://www.a-ron.net/
ブログ : http://d.hatena.ne.jp/officearon/
連絡先 : clinic@a-ron.net

 
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