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特集2:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から V「モノを売るのでなく経験を売れ」――経験価値を軸にしたセールスへ
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(プロフィール
■説得しないセールス法がある?

 前回は"経験価値"というコトバを紹介しました。これは、要するに「モノを売るのでなく経験を売れ」ということですね。でも、問題はどんな経験(体験)を買い手に与えるかです。ひとつ興味深い例を紹介しましょう。
 アムウェイのような人のネットワークを活かしたビジネスといえば、サプリメントなど販売する説得ノウハウがすごいと思われがちです。ところが、月収百万円以上を稼ぐという女性達を調査すると全く意外なことがわかりました。
 なんと、自分では商材の説明はほとんどしないのです。その場では説得めいたことは言いません。売り込む行為はせずに、各地で開催される体験型セミナーに来てもらうことだけを優先するのですね。そして、セミナーの場ではサプリメントを飲んでこんなに元気になったなどの"成功者の体験"に直接触れさせ、感動を共有しようというわけです。

■説得への抵抗心である「心理的リアクタンス」を防ぐ

 この方法は心理的には二重の効果があります。

 まず、無理に売らなければという焦りもないため、気軽な気持ちで商品の紹介をできることです。説得しようとすると、買い手側の抵抗感("心理的リアクタンス"という)が生まれます。売り手が一生懸命になればなるほど、説得されまいとする反発や警戒心が生まれるのですね。とくにプライドの高い男性(私もですが)などは、「誰が説得されるものか」となります。でも、あえて買わなくてもよいような態度をされると、そうしたマイナス反応は起こりません。

■話し手の「ハロー効果」による経験価値創り

 さらに、もう一つの理由は、話し手の「ハロー効果」による経験価値創りができることです。一般にプラスイメージの心理的作用を「ハロー効果」というわけですが、ここのセミナーでは、語り手は商品の購入者であり自分とも違わない人です。それがこの商品をきかっけにして健康で若返ったりした話には「自分もなれる!」という共感が生まれます(下図参照)。

 注意したいのは、ここではあくまで話し手の方に焦点があること。つまり、商品はサポート役なのです。この場では、話し手のイメージが重要なものとなりますが、成功している人が登場する以上悪くなるはずがないわけですね。その結果、「話し手のプラスイメージ」=「商品イメージ」と重なることになります。詳しい商品説明などが不要なのは、すでにプラスイメージが与えられる体験が購入への動機となるためです。

 CMでも有名タレントのイメージと商品を結びつける手法がよく使われますね。ここでの効果はさらに強力です。なにしろ、すぐ目の前にその人がおり、皆が感動しているわけですから! こうなると商品の説明などは、もう二次的なことになります。どうしてかわかりますね。まさに商品としてのモノがほしいのではなく、それを通じての感動や生きがいがほしいということになるからです。

 このような例は、「モノを売るのでなく経験を売れ」というお手本となるものです。実は経験価値の最高の形は、こうした"感動"や"生きがい"に関連したものだということです。そう考えると、優れたセールスマンとは、説得力よりも感動を顧客と共有すること自体に喜びを感じる能力に長けている人かもしれませんね!


■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
匠 英一氏 デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
 現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
 著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:takuei@netlaputa.ne.jp

 
 

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