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特集4:独創的な人材育成施策と人事評価制度でIT人材の人間力を向上!サンネット株式会社「『育つ社員』のつくり方」セミナー取材
サンネット株式会社コンサルティング事業部 ゼネラルマネージャー
島川孝博(プロフィール
■サンネット株式会社について
 サンネット株式会社は、人材育成について10年以上前から独自の手法を用い、独創的な人事評価制度を構築して実践しているシステムインテグレータで、書籍の出版やセミナーなども頻繁に開催している非常にユニークな会社です。今回、サンネット株式会社主催の「『育つ社員』のつくり方」というセミナーを取材してまいりました。

■プロジェクトマネージャーとして数々の大規模プロジェクトを
 成功へと導く中で、人材育成の大切さに気づく
(発表者:コンサルティング事業部 ゼネラルマネージャー 島川孝博氏)
 「『育つ社員』のつくり方」セミナーの発表者は、コンサルティング事業部 ゼネラルマネージャー 島川孝博氏です。島川氏は、プロジェクトマネージャーとして数々の大規模プロジェクトを成功へと導く中で、人材育成の大切さに気づき、社内の人材育成に尽力するようになったそうです。当初は、社員の資格取得を推進する責任者として社員の手本となるべく、当時の情報処理資格である第一種情報処理技術者、特種情報処理技術者、プロジェクトマネージャーを取得(そのほかにもPMP、ITコーディネータも取得)。その姿勢が評価され、サンネット株式会社独自の人材育成制度構築のメンバに抜擢され、さらにコンサルティング事業部を任されるようになったとのことです。また、人材育成に関するサンネット株式会社の著者としても活躍されており、現在では、人材育成・人事評価制度の構築運用支援のコンサルティング実績が10社、JUAS人材育成部会のメンバやUISS改善ワーキンググループのメンバとしても活躍中です。

■IT人材育成の課題について
 最初に島川氏は、過去3年間にわたるJUASのIT動向調査の中から、IT人材育成の課題について抽出し、どういった課題があるのかを整理しました。
 ●IT人材育成の課題

  これからのIT人材に必要なのは
    1. 企画力、提案力、全体を把握する力
    2. プロジェクトマネジメントを含めた高い技術力
    3. 業務経験
    4. ヒューマンスキル(コミュニケーション、ネゴシエーション)
    5. コンセプチュアルスキル
 これらの力、いわゆる「人間力」は、研修だけではなかなか身につきません。確かに良い研修は世の中に多数ありますが、研修後に「実践する場」がなかったりすると研修の内容を忘れてしまうという経験はないでしょうか。研修して学んだことは実践して身に付けるという場が無いと薄れていってしまう、発揮する場がなくてはなかなか身につかないのではないでしょうか。

■国はIT人材の育成をどのように考えているのか。
 国は、より高度なIT人材の育成をどのように考えているのでしょうか。産業構造審議会情報経済分科会情報サービス・ソフトウェア小委員会人材育成ワーキンググループの報告書の「高度IT人材の育成を目指して」を見ると、「構造変化に対応し、変革をリードできる人材」として、基本戦略人材、ソリューション系人材、クリエーション系人材、グローバル人材の4類型が必要とされています。

 このような人材に必要なスキルを可視化し、育成するための指針として「共通キャリア・スキルフレームワーク」が作成され、また、ITSS、UISS、ETSSの3つのスキル標準と、情報処理技術者試験とを連携させる動きが始まっています(詳細は、経済産業省「産業構造審議会情報経済分科会情報サービス・ソフトウェア小委員会人材育成ワーキンググループ報告書 〜高度IT人材の育成をめざして〜」を参照)。

 しかし、「人間力」は標準として体系化が難しく、ITSS、UISS、ETSSでも必要かつ重要なスキルとして明記されながら、「人間力」の範疇に該当するスキルは標準化の範囲外もしくは一部の定義に留まっています。各社固有の業務に左右され、個々の企業独自のものもあるので標準化は難しいのです。しかし、レベル4以上のハイレベルは、ITスキルだけでは結果を出せないことがたくさんあり、また相応のビジネス経験が必要で、どうやってその力を着実につけさせればいいのか、ということが重要な課題になってきます。

■IT人材の人間力向上コンセプト
 なぜ社員が思うように育たないのか、うまく育成していくコツは何か、実践を通して気づいたポイントは以下のとおりです。
    1.「育成」=「研修」と思い込んでいないか。
    2.「育成」の目的と目標を見失っていないか。
    3.「育成」の効果を測定しているか。
    4.「課題」を本人と共有しているか。
    5.「成長の喜び」を共有しているか。

■サンネット型人材育成「育つ社員のつくり方」具体的施策
 上記の人材育成のコンセプトを踏まえ、島川氏は以下のように人材育成を実践されています。
 「育つ社員」のつくり方 Point1

  ・「目的」と「目標」の明確化
    1. ビジネス戦略(経営方針・事業計画)
    2. 人材戦略(自社に必要な人材像)
    3. 現状把握と育成計画
 ITSS、UISS、ETSSの3つのスキル標準でも、その活用方法として明記されていることですが、ビジネス戦略に沿って明確な人材戦略がまず必要です。自社に必要な人材像を明確にした上で、現状とのギャップを分析し、現状の人材をどのレベルにまで育成するのか、どういう要員をどの程度増やすのかなど、ビジネス戦略に沿った人材育成計画を立てることから始まります。意外にもこの手順を踏まずに、闇雲に教育・研修を繰り返す事例は少なくありませんが、それではなかなか結果に繋がらないのが現状です。「何のための育成なのか」人材育成の目的と目標を見失ったままでは、育成の効果も測れず、教育や研修を実施すること自体が目的化してしまい、本来目指すべき成果に結びつきにくいのです。
 「育つ社員」のつくり方 Point2

  ・実践の場の提供
    1. 業務では経験できない経験をする場
    2. 研修の成果を実践する場
    3. 成長を実感する場
 育成した効果を測定するには、実践した結果を評価することが重要です。しかし、業務の現場だけではどうしても足りません。育成の効果を測り、目標に到達するために何が不足しているか「課題」を認識し、また、そこまで成長した、ということを実感するためには、業務だけでは経験できない業務以外のさまざまな経験の場を与えることが必要になります。それは、研修の成果を実践する場ともなり、また、本人が成長を感じる場ともなります。 特に最近の若い人は、「気づき」に鈍くなっているので、成長した喜びに気づかせてあげることがとても大切です。

 そういった経験の場として長年の試行錯誤の結果、効果が現れた代表的な3つの施策を紹介します。

 第一に、サンネット独自の施策「全社員営業」です。サンネットはシステム開発を中心としたシステムインテグレータですが、開発職も含めた社員全員が営業活動(飛び込み営業)を行っています。その活動の成果についてはきちんと評価し、報酬に結び付けています。一見突飛に見えるこの活動を社員が実践することによって、社員のヒューマンスキルが着実に向上しています。

 初対面の人に会うのは勇気がいりますが、挨拶や言葉遣い、コミュニケーションの実践的な訓練になります。営業するためには準備が必要で、自分の会社の特長や自社の業務について、自分の担当する仕事以外のことも理解し、説明しなければならないので、いろんな知識とスキルが身につきます。仕事をいただくことの大変さも身に染みて実感し、ひとつひとつの仕事を大切にする姿勢が身につきます。お客様の立場に立って考える、という習慣も身につきます。

 業績としての成果も確実に上がっており、本人の感想としても「営業の経験はすべて自分の経験になる」「開発経験だけでは得られないものがある」「経験をしてはじめて自分が感じるものがある」と好評です。
 「育つ社員」のつくり方 Point3

  ・経験の積み重ね
    1. 業務に活かせる「経験」
    2. 「実感」を伴った経験
    3. 「気づき」
 こういう経験は継続的に積み重ねていくことが大事です。そして、その経験は何らかの形で必ず業務に活かせるものです。

 全社員営業では、営業報告書を必ず提出させ、そこに「私見」として気づいた事、学んだ事、なども記述します。それに上司が「その経験は、今の業務の現場に当てはめると、こういうことになるね。だから、こうやって業務に活かしていこう」という具合にコメントを記入して本人に返します。これを繰り返すことによって、本人が自然と何かに気づくようになります。そのためには上司のほか周囲のフォローが必要です。やがて自分で気づくようになることが大切ですので、やらせっぱなしでは駄目です。最初はヒントを与え、繰り返すのです。それを続けていると「気づき」が自然と起こってきます。

 自分で「気づき」を得られるようになると、社員は勝手に育ち始めます。

 経験する「場」を提供し、「気づき」のヒントを与え、それを繰り返すということが大切です。

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