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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(9)
 ●事例

 では、事例を使って実際のモチベーション・コントロールを説明しよう。
 (前回までのあらすじ)
 筆者は以前A社の人事システムの改善を担当した。A社の人事システムは、セールスマンの業績評価・給与計算を行うもので、10年以上の保守を重ねた結果、頻繁に誤計算などのシステム障害を繰り返すようになっていた。A社ではこの事態を問題視し、再三、システム部に改善命令を行ったがうまくいかなかった。このシステムの管理者の山下とメンバーの人間関係も悪化し、メンタル面でも非常に大きな問題に発展している状況であった。
 そこで、筆者はまずメンバーにミッションを認識させることにした。ミーティングはもちろん、日常のあらゆる機会を使い、メンバーにミッションは何かを問いかけることにした。最初は筆者をよそ者扱いしていたメンバーだったが、次第に自分たちのミッションを認識するようになっていった。

 筆者がメンバーに動機付けを行う上で考慮したのは「彼・彼女らに自分で考えたことを試し、成果を出させる」ということであった。メンバーは長年、上司である山下に、「考えること」や「行動」を制限されていた。つまり、「自分で考えても実行させてもらえない。どうせ無駄なこと」という感情で支配されていたため、これが。大きなメンタルブロックとして存在していたのである。筆者はまず、これを破壊することが必要だと考えた。
 そこで、小さなことでもよいから、メンバーが考えたことを実務上で試して、成果を出す必要があったのである。筆者が考えたことで成果があっても意味がない。重要なのは、彼・彼女らが自ら考え、よいと思った施策が成果を出すことである。そうすれば、メンバーは自信をもって次の施策を考えることができ、よい循環になると考えた。
 
 ●それはいいね。すぐやろう!


 筆者はメンバーにシステム品質策をたくさん考えてもらうことにした。しかし、当初は、メンバーの口は重かった。すでに「改善というミッション」を理解しているメンバーであったが、その具体的な改善策については意見を言わない状況が続いた。
 無理もないと思う。長年、自分たちの考えは山下に否定され続けてきたのだから急には言えないのである。
 筆者はさまざまなサポートを行った。結論ではなく、考え方を教え、試してみようと何度も言った。次第にメンバーは少しずつ意見を言うようになった。その最大の原因は筆者が「責任は俺が取る」と言ったことが大きいと思う。
 「君たちがこのシステムの問題を一番よく知っているはずだよ。だから、俺には改善策は考え付かないけど、君らにはわかるはずだ。何でも試したらいいじゃないか。失敗してもいいじゃないか。どうせ、今は最悪なんだし、これ以上悪くならないよ。君たちの考えたことなら大丈夫。俺が責任を取ればいいから」
 こんな内容を言ったと思う。
 この一言がメンバーの気持ちを変えたようだった。彼・彼女らは積極的に改善策を試すようになり、いくつかが成果となって現れるようになった。こうなると、メンバーは自然に動けるようになった。改善するのが楽しくなったのである。ここで、改善策を考え、実行することで成果を出すことがメンバーの動機になったのであった。

 次回は、動機をより詳細化した概念――「行動のインセンティブ」について説明する。

 

■芦屋 広太(Asiya Kouta)氏プロフィール
芦屋広太氏 OFFICE ARON PLANNING代表。IT教育コンサルタント。SE、PM、システムアナリストとしてシステム開発を経験。優秀IT人材の思考・行動プロセスを心理学から説明した「ヒューマンスキル教育」をモデル化。日経コンピュータや書籍への発表、学生・社会人向けの講座・研修に活用している。著書に「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社)、「Dr芦屋のSE診断クリニック(翔泳社)」など。

サイト : http://www.a-ron.net/
ブログ : http://d.hatena.ne.jp/officearon/
連絡先 : clinic@a-ron.net

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