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特集2:「人材育成投資」――システマティックな人材育成のための効果測定の目的
 研修の効果測定といった時に基盤となっているのがカークパトリックの4段階評価ですが、それぞれの評価レベルの目的はなんでしょうか。
 以下に、D.カークパトリックの4段階レベルに基づいて、それぞれのレベルの測定を行う目的を整理してみました。
 

 ■レベル1測定の目的

 レベル1測定は参加者のプログラムに対する評価ですが、このレベルの評価によって知ることができることは何でしょうか。
評価項目(何を知りたいのか) 評価目的(なぜ知りたいのか)
どの程度、コース目標が達成されたか コンテンツの見直し、インストラクショナルデザインの見直し、ファシリテーターのアセスメントのため
効果的なインストラクター、ファシリテーターであったか ファシリテーター、インストラクターへの研修、または変更が必要かどうかを知るため
インストラクター、ファシリテーターは説得力があったか ファシリテーター、インストラクターへの研修、またはより深く研修内容を理解しているファシリテーター、インストラクターへ変更が必要かどうかを知るため
インストラクター、ファシリテーターは有効な学習環境を創り上げていたか ファシリテーター、インストラクターへの研修、または変更が必要かどうかを知るため
内容は現場業務での実践に対して適切であったか コンテンツの見直しが必要かどうかを知るため
コース内容進行の順番は適切であったか コンテンツの見直し、ファシリテーター、インストラクターへの研修が必要かどうか
インストラクショナルデザインは効果的であったか インストラクショナルデザインの見直しが必要かどうかを知るため
さまざまなメディアの活用は学習の習得をより効率的、容易にしたと思うか メディアタイプの見直しの必要性を知るため
研修前の教材(eラーニングコースなどを含む)は実際の研修参加の準備、理解に役立ったか 教材(eラーニングコースなどを含む)の見直し、または廃止の必要性を知るため
参加者は研修前の教材(eラーニングコースなどを含む)を研修参加前に完了したか 研修前ワーク、コースの廃止、または提供のタイミングや方法の変更、研修前ワークを完了させるための戦略の見直しが必要かどうかを知るため
 

 ■レベル2の目的

 学習内容の習得度を測るのがレベル2ですが、具体的な目的の例を見てみましょう。
評価項目(何を知りたいのか) 評価目的(なぜ知りたいのか)
どの程度、学習者の知識やスキルに変化があったのか ファシリテーター教育、テストや学習内容開発、インストラクショナルデザイン戦略の見直しが必要かどうかを知るため
テストやアセスメントの方法は学習効果測定への適性度合い アセスメント方法の再開発のため
参加者の学習したスキルのデモンストレーション結果からの学習効果測定の適性度合い アセスメント方法の再開発、参加者へのアセスメントインストラクションの変更
研修の内容は参加者が十分に学習効果を示すことができる内容であったか 研修内容の再デザインや開発、研修のニーズや受講者の再分析が必要かどうかを知るため
インストラクショナル戦略として、参加者に十分な実習やデモンストレーションの機会を与えていたか インストラクショナル戦略の見直しや変更やファシリテーターによる実習やデモンストレーションへの指導説明の見直しや変更が必要かどうかを知るため
デモンストレーションや実習の際の行動のチェックリストが効果的に使われたか ファシリテーター、インストラクターへの研修やアセスメントの道具・手段の見直し、指導の改善が必要かどうかを知るため
 

 ■レベル3の目的

 研修が知識やスキルとして研修の場面での「学習」として習得されただけではなく、仕事の現場での行動変容として現れているかどうかを知るための測定レベルです。
評価項目(何を知りたいのか) 評価目的(なぜ知りたいのか)
研修コース内容の何が実際の仕事で使われているのか ニーズアセスメントと研修内容の適性の立証、ファシリテーター、インストラクターへの研修、または変更、コースデザインをより実践的、現場での応用への展開を中心にしたものへの変更が必要かどうかを見極めるため
参加者が研修で習得したスキルや知識を活用し、業務でその能力を発揮することに対して、上司がどのように支援しているか 学習の習得率の強化点、参加者のスキルや能力の上達への認識や有効な評価、新しいスキルや知識の唱道者としての受講者の活用をしているかどうかを知るため
参加者が研修で習得したスキルや知識を活用し、業務でその能力を発揮することに対して、上司が妨げになっていないかどうか 上司のかかわりや支援を得るための戦略の開発の必要、インストラクショナルデザインや戦略の再検討の必要、研修内容が対象受講者にとって適性であったかどうかのアセスメントのため
組織文化は研修内容の活用や開発を支援しているか 組織文化を変革するための戦略の開発が必要かどうか、リーダーに変革を阻止するような行動やプロセスがないかどうかを知るため、キャリアパス、評価・表彰、報酬制度、人材配置、業務要件など他の人材開発施策との連携点を知るため
 

 ■レベル4評価の目的

 研修受講者の仕事上の行動変容がもたらした組織へのインパクトを測る目的です
評価項目(何を知りたいのか) 評価目的(なぜ知りたいのか)
経営的成果指標への変化はあったか 組織ニーズや組織の価値に対してどの程度研修の効果があったかコースの継続、再設計や開発は必要かどうかを知るため
どの程度経営的成果指標への変化があったか 価値変化を示すためのコミュニケーションプラン作成のため
どの経営指標への変化が研修による貢献なのか 研修貢献度を経営インパクトとして捉えることのできる変数を見極めるため、費用対効果分析、プログラムの継続の必要性を見極めるため
付加的な貢献がなかったかどうか 組織の関係性やコミュニケーションなどの改善などによる、組織的な価値の向上があったかどうかを知るため
ROIはどうだったのか プログラム予算の確保や継続の必要を示すため
プログラム全体の支出額はどうだったのか 予算編成やコース管理改善、リソースの有効活用のため
支出のブレークダウンはどうだったのか コース管理・運用の改善やベンダーコストの比較検討、プログラムコストの軽減のため
 以上、それぞれの評価レベルにおける測定の項目と目的を大まかに見てきましたが、どのような経営ニーズに対して、どのような研修や人材開発プログラムがあり、各測定レベルでは何(What)をする必要があるのか、なぜ(Why)測定する必要があるのか、どのように(How)測定するのか、測定ための情報源(Source)は何になるのか、いつ(When)測定をするのか、どこで(Where)測定をするのか、誰が誰に(Who)対して測定を行うのかを整理してから、実際の測定のための計画に入る必要があります。
 経営戦略との整合性や、無駄な研修の支出がないかどうかを検討するためにも、測定の実施如何に関わらず、人材開発プログラム全体の有効性をチェックするためにも、人材開発部門として備えておくべきものではないでしょうか。

中原 孝子氏 プロフィール
中原 孝子氏 中原 孝子(なかはら こうこ)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。
その後、慶應義塾大学環境情報学部武藤研究室訪問研究員として、インターネットを利用したデータマインニングやeラーニングなどの研究に携わった。
職歴:米系製造販売会社、金融機関、IT企業にてトレーニングマネージャーとして活躍し、平成14年5月、株式会社インストラクショナルデザインを設立。
会員:ASTD会員、慶應義塾大学環境情報学部研究員

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