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特集1:ITSS 新たなステージへ『ITSS Users' Conference 2006』最新レポート〜セミナー編〜
 2005年12月7日(水)、東京都千代田区平河町にある砂防会館 シェーンバッハ1Fにて、「ITSS 新たなステージへ」と題して『ITSS Users' Conference 2006』が開催されました。当日は、設立二周年を迎えたITSSユーザー協会の活動を中心に、各IT業界の最前線で活躍する方々が、過去、現在、そして未来に向けてIT人材の育成という観点からさまざまな思いを語りました。ITスキル標準がリリースされてから3年が経過した現在、「ITSSを理解するステージ」から「ITSSを実際に使用するステージ」へシフトする段階に入っています。前回の「基調講演編」に引き続き、今回は「セミナー編」と題してご報告いたします。
 
 「ITスキル標準バージョン2とその戦略的活用について」
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)ITスキル標準センター長 小川健司氏 
 『ITSS Users' Conference 2006』の午後の部はセミナーが中心でした。そのはじめとして、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)ITスキル標準センター長 小川健司氏より、現在センターの活動についての発表がありました。ITSSバージョン1発表以来3年が過ぎましたが、ITスキル標準センターでは、2006年3月にバージョン2を発表すべく活動をしています。ITスキル標準バージョン2では、バージョン1で顕在化した構成内容や活用方法のわかりにくさを課題として外部関係者と協議、対応の方向性を検討したところ、以下のような点を中心に改訂がすすめられたということです。
 
(1)専門分野に関する改定案
ITアーキテクトの専門分野を「アプリケーション・アーキテクト」「インテグレーション・アーキテクト」「インフラストラクチャ・アーキテクト」に新たに分類。
プロジェクトマネジメントの専門分野を「システム開発」「ITアウトソーシング」「ネットワークサービス」「ソフトウェア製品開発」に統廃合/名称の変更。
(2)達成度指標の見直し
「責任性」「複雑性」「サイズ」を「ビジネス貢献」という新概念で括り、「複雑性」「サイズ」でビジネスおよびプロジェクトの難易性、その上位に責任分野と役割としての「責任性」という構造を持たせ、ビジネスへの直接の成果(組織の存続)を測る。
「タスク特性」は名称を廃止し、新たに「プロフェッショナル貢献」とする。各種専門分野でのリーダーシップの発揮や人材の育成、倫理性など、組織・業界の継続的成長を測る。

 また、ITSSは「普及・浸透の時代」から「活用の時代」へ入ったとして、「人材投資で実現するビジネス戦略(ビジネス戦略に基づいた人材の育成・活用/市場で求められる人材の戦略的育成)」という戦略的活用について提言がありました。そのためにはITSSに対する経営者の認識の重要性を指摘し、「経営者からのトップダウンで、事業戦略に応じた人材投資の気運を高め企業を活性化する」「経営者の理解を深めITSS普及に弾みをつける」ことが不可欠であることを述べられました。
 例えば、ITSSを活用した人材投資のプロセスとしては、現在のビジネス形態の把握から3年後のビジネスプランの策定をしたうえで、ITSSによる人材の棚卸しや人材の適正配置があり、経営戦略へのITSSの活用としては、「企業ビジョンと経営領域の確認」→「人材スキルMAPと問題定義」→「新経営戦略に必要な人材/ITスキル標準に基づきスキル確認(新経営戦略に必要な人材<スキル>に対してITSSを活用してGap分析を行い、長期/短期的に人材育成の方向性を検討)」→「人材育成強化プロセス(必要な人材育成を研修ロードマップを利用して教育計画を立て、導入計画を作成)」→「資格・人事制度との関連性(ITSS導入・活用に際して、各企業に合った制度を検討し、キャリアアップの動機付けにしていく)」などが提示されました。
 最後に人材育成の成功要因は経営者の積極的な関与が重要であるとして、「経営資源としての人材を育成することから、戦略的投資として位置づけることが重要」「経営者自らが率先して組織化を含めリーダーシップを発揮し、全社として取り組む姿勢を徹底する」ことをあげられました。
 
 「IT人材育成=IT事業運営戦略もしくはIT活用戦略、待ったなしの育成と活用」
社団法人情報サービス産業協会(JISA)副会長 有賀貞一氏 
 次に、社団法人情報サービス産業協会(JISA)副会長であり、株式会社CSKホールディングス代表取締役の有賀貞一氏によるIT人材育成をテーマとしたセミナーがありました。有賀氏は、まずIT投資対効果において企業間に大きな差が生じていることを提起されました。同じような投資をしていてもその生産性に差が出るというのです。そして、「Intangible Assets(見えない/無形の資産)」へ投資しているかどうかが重要なポイントの1つであることをあげられました。ここでいう「Intangible Assets」とは組織的資産であり、人材やビジネスプロセス、社員教育や企業文化といったものです。そしてIT投資は工場建設(投資)などと同様の設備投資であり特別視する必要はない(してはいけない)ことと、ROI(教育投資効果)きちんと定義して計測可能にして、評価できるように実施すべきことを述べられました。そして、同時にITのみを進化させるのではなく、技術革新と並行して経営そのものを革新とIntangiblesなものへの投資の継続がうまくいけば、高成長を遂げている情報サービス業(IT活用による業務サービスプロバイダ、ASP型プロバイダ等)でのビジネスチャンスを見出せる可能性があること、そして、なによりも低成長時代の新しいビジネスモデルへの適切な対応ができるIT活用施策が急がれることを示唆されました。
 さらに、これから求められる真に高度な人材として、「基本技術のレベルが高い(きわめてコンパクトかつエレガントなコードが書ける等)」「プロジェクトマインドに優れる(数百人規模のプロジェクトを支障なく運営できる等)」「技術+マネジメント横断的な思考ができる(各通信業者のサービスを理解して、新しいネットワーク提案ができる等)」「ビジネス感覚がある(商品企画開発と販売戦略に優れる等)」をあげられました。そして、ITで事業を営む企業にとって人材育成は事業運営戦略そのもの、ITユーザー企業では人材育成はIT活用戦略そのものであることを述べられ、人材育成は経営の課題であり、育成に当たってはもう人事任せではダメであること、事業戦略に責任を持つ部門が担当すべき時が来ていることを訴えられました。また、ITSSを適切に活用することによって高品質でトラブルプロジェクトを未然に防止することのできるプロジェクト形成ができるようになるのではないかと述べられました。
 
 「我が国の情報サービス産業育成政策とITSS、
                      そしてITSSユーザー協会への期待」
経済産業省商務情報政策局 情報処理振興課 情報化人材室長 野口正氏 
 経済産業省商務情報政策局 情報処理振興課 情報化人材室長 野口正氏からは、日本における情報サービス産業を取り巻く環境、および、それを支える人材と人材育成政策、また、ITSSの役割とITSSユーザー協会への期待についてお話がありました。
 まず、ソフトウェアは「現代経済社会の基盤として、あらゆる産業を支え、かつ製品・サービスの価値を生み出している」とし、「産業全体の競争力の強化、構造改革の推進に、ソフトウェアは極めて大きい役割を果たす」源泉であると述べられ、情報サービス産業の市場規模が10年間で市場規模においてほぼ2倍の拡大を見せている資料や情報サービス産業の売上高、ソフトウェア開発規模の増大のチャート等を提示されました。ただし、近年の傾向として、より規模の大きいソフトウェアをより短期間で開発する要求が増大していることからくる品質の低下を懸念しており、ソフトウェアの生産性の抜本的向上のためには、「家内制手工業的開発手法(種々の要求を対症療法的に作りこみ<増築を重ねた温泉旅館構造>体系立った構造構築も開発手法もなく、個人芸で押さえ込む)」から脱却し、「組織で体系的に開発する体制(エンジニアリング手法の導入<組織で対応するには共通の「言語」と全体の管理が不可欠>)」および「人材の育成<組織の中で個々の技術者をスキルアップ・適切に配置することが必要>」が重量であることを述べられました。なお、経済産業省におけるIT人材育成施策としては「情報処理技術者試験(1969〜)」「ITコーディネイター(NPO)(2001〜)」「ITスキル標準/組込みスキル標準(2002〜)」「産学協同実践的IT教育促進事業(2005〜)」を展開していると説明がありました。なお、最後にITSSユーザー協会への期待として、ITSSの理解・活用法で困っている企業が多いことや、スキルの現状把握に至らず経営者の動機付けができていないことをあげ、スキル評価までを簡易に行える導入モデルの提示をあげられました。
 
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