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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(15)

IT教育コンサルタント 芦屋 広太(プロフィール

 あなたはヒューマン・マネジメント能力に自信をもっているだろうか? マネジメントで最も難しい"人間の問題"、これにうまく対処しなくては仕事の成功はない。"人を動かすためには何が必要か"を理解し、適切に行動しなければならない。
 前回は、システム統合における複雑な人間模様について簡単に説明した。同じ「システム統合」という案件に参加する人なのに、その会社、立場で考えることが微妙に違う。このような複雑な人間関係のプロジェクトを管理していくのは非常に骨が折れる作業なのである。
 では、今回は、筆者が行ったヒューマン・マネジメント戦略について説明していくことにしよう。
 
 ●スタンスを明確にする
 まず、最初に必要なことは「システム統合におけるスタンスを明確にする」ことである。繰り返しになるが、システム統合には、さまざまな思いをもった人間たちが参加する。自分たちが顧客にサービスしている機能を存続させたい人たち(ぜひ、存続システムにカスタマイズを加えたいと願う人たち)もいるし、カスタマイズなんて金と時間がかかる行為は絶対許さない人たちもいる。そして、カスタマイズは嫌だが、業務が続けられないことは駄目という中途半端なことを言う人たちもいるのである。
 このようなニーズが違う人たちに、それぞれいい顔をしようとすると自己矛盾に陥るので、システム統合のプロジェクトマネージャーは明確なスタンスが必要になる。
 基本的なスタンスは「カスタマイズはしない」である。前に説明したとおり、カスタマイズは、金と時間がかかる。さらに言うと、存続システムを設計・開発したシステムエンジニアにしかカスタマイズはできないため、調達できるエンジニアの数も知れている。
 このような状況で、安易にカスタマイズを行うことを許してしまうと、プロジェクトマネージャーは、リソース不足(金、人材)に酷く悩まされることになるから注意が必要だ。システム統合は、それ自体大変な作業なのだから、カスタマイズをしている余裕はまったくないことを認識してほしい。
 このような事情から、システム統合では、まず、カスタマイズは絶対しないというスタンスをとることが得策となる。
 とはいうものの、どうしてもカスタマイズが必要になることはある。この場合は、仕方なくカスタマイズするが、あくまで「例外措置」という位置づけを徹底しなくてはならない。最初から「カスタマイズは行う」と表明してしまうと、多方面から「ぜひ、当社のためにカスタマイズをしてほしい」との声が殺到し、収拾がつかなくなるからである。
 つまり、最初から「カスタマイズしない」と表明しておき、どうしてもカスタマイズが必要な場合に限り、「例外的に行う」とすれば、感謝はされるが、文句はでない。しかし、最初に「カスタマイズは行う」と表明したのに、後から「できない」と言うと文句を言われ恨まれる。スタンスの違いでこのような違いになるのであれば、最初から「カスタマイズはしません」と強く宣言する方が得策なのである。
 筆者も、このセオリーどおり「カスタマイズはしない」スタンスとした。これを周知徹底するために、統合会社が集まる会議で、公式見解としてこれを説明した。そのとき、会場がざわつき、多くの人から厳しい目で見られたことをよく覚えている。私の長い戦いは、この所信表明からスタートしたのであった。
 
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