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特集1:見えてきたITSSの真価 『ITSS Users' Conference 2007』最新レポート
 2006年12月5日(火)、東京都港区北青山にある青山ダイヤモンドホールで、「見えてきたITSSの真価」と題して『ITSS Users' Conference 2007』が特定非営利活動法人ITSSユーザー協会主催のもと開催されました。2006年は、ITSSがメジャーバージョンアップおよびマイナーバージョンアップして「ITSSV2 2006」となり、また、6月に、情報システムユーザースキル標準(UISS:Users'Information Systems Skill Standards)が発表され、IT業界の構図がより体系的・具体的に整理されてきた年だったと思われます。これらのスキル標準動向を踏まえ、各IT業界の最前線で活躍する方々が、過去、現在、そして未来に向けてIT人材育成という観点からさまざまな問題提起や提案を行いました。また、設立4周年を迎えたITSSユーザー協会の活動もますます充実してきていました。「eラーニングマガジン」編集部が取材をしてまいりましたので早速ご報告いたします。

 基調講演 第一部 「ITSSV2 2006 + UISSの活用と今後の展開」
特定非営利活動法人 ITSSユーザー協会 専務理事 高橋秀典氏 
 最初に、特定非営利活動法人 ITSSユーザー協会専務理事で株式会社スキルスタンダード研究所代表取締役の高橋 秀典氏より基調講演がありました。まず、協会の2006年度の活動実績を報告した後、「ITSSV2」のドキュメントを中心に、「ITSSV1」からどのように改訂がなされ、どのように活用すべきなのかの包括的かつ具体的な説明がありました。つまり、ITSS活用のポイントは「共通指標であること」「参照モデルであること」「ビジネス戦略に合わせて(必要であれば)企業固有に再定義してもよい」「すべてを必ず使う、もしくはそのまま使うという位置づけにはない」ということが方針として明確化されました。さらに、「ITSSV2 2006」では、ITサービスに対する社会的な影響の増大が無視できなくなってきたことから、「オペレーション」が「ITサービスマネジメント」という職種名に変わり、専門分野の「運用管理(ITサービス提供の責任を担う)」はレベル7まで定義されました。また、6月に発表された情報システムユーザースキル標準(UISS:Users'Information Systems Skill Standards 以下、UISS)に触れ、「ユーザ企業における情報システム機能を経営的観点から事業戦略も含めて体系的に整理したもの」であることを解説され、両方をうまく活用することで、ITSSは経営マネジメント・人材マネジメントに大変有効である旨を訴えました。そして、ITSS導入におけるまとめとして以下のような提言がなされました。

1)「ITSS」の企業導入時に必ずしなければならないこと
経営者自らが内容を理解し、リーダーシップをとること
推進者には優秀な人材をアサインすること
ビジネス目標、経営戦略、IT戦略から「目標人材モデル」を策定すること
導入後の継続運用についても十分に検討すること

2)「ITSS」の企業導入時に絶対してはならないこと
議論せずに「ITSS」をそのままの形で導入すること
理解度の低い担当者に丸投げする(責任を押し付ける)こと
「目標人材モデル」を策定せずにスキル診断を行い、人事に取り入れること

 最後に、今後の動向として、「ITSS」と「UISS」でのスキルディクショナリの共通化が望ましい旨を上げられ、組込みスキル標準(ETSS)も含み、スキルディクショナリを核としたスキル標準の普及を期待したいと述べられました。

 基調講演 第二部 「eラーニングによる能力強化の取り組みと課題」
独立行政法人メディア教育開発センター理事長 清水康敬氏 
 次に、独立行政法人メディア教育開発センター理事長 清水康敬氏より第二部として基調講演がありました。独立行政法人メディア教育開発センターは、総合的な学習ゲートウェイである「能力開発学習ゲートウェイ NIME-glad(ナイム・グラッド)」の高機能化を進めており、この中で、企業が求める大学卒業生の能力強化、若者の就業意識向上のための草の根eラーニングプロジェクト、大学入学生の学力低下を補うリメディアル教育用eラーニングを実施していること、また、学校教員のICT活用指導力向上のための研修システムを行っている旨を詳しく伝えられました。特に「NIME-glad」は、学習オブジェクト(Learning Object in the Repository)自体と、リンクされた学習オブジェクトを、国際標準のLOM(LOM:Learning Object Metadata<学習オブジェクトするメタデータのこと>)データーベース貯蔵しており、海外のゲートウェイとも連携している利便性の高いサーチエンジンであることを述べられました。


 セミナー 「情報サービス・ソフトウェア産業維新」時代の人材育成
社団法人 情報サービス産業協会(JISA)副会長 有賀貞一氏 
 セミナーでは、「情報サービス・ソフトウェア産業維新」時代の人材育成と題して、社団法人 情報サービス産業協会(JISA)副会長 有賀貞一氏より興味深い講演がありました。まず、産業構造審議会の情報サービス・ソフトウェア小委員会において今後の産業のあり方が検討され、「情報サービス・ソフトウェア産業維新」というレポートがまとめられたという報告がなされ、この中で、情報サービス産業は「課題解決サービス提供産業」へ、ソフトウェア産業は「サービス基盤提供産業」への変身を図ることが提示されており、この目標への課題と解決策が示されたことを述べられました。特に、人材育成に関する課題は、両産業の絡む重要なものであり、それを受けるかたちで今後情報処理技術者試験の改革、ITSSと試験の整合性、ITSS活用、教育における産官学連携等に関して、具体的な検討が進んでいる状況を説明し、今後の人材育成のあり方に関する視点として、「システム関連知識技術(システム分析・コンサル、コンピュータ科学、ネットワーク、セキュリティ関連、システム運用、システム開発方法<論>)」+「業務知識(ドメイン知識)」「付随する関連知識(契約、法律、パートナー管理、知財、サービス提供方法等)」+「プロジェクト管理能力」といった、ダブルもしくはトリプルスタンダードを備えた人材が必要であることを述べ、ITサービス業界の人材育成パラダイムの変革を訴えられました。


 セミナー 「情報システムユーザースキル標準(UISS)の概要と今後の展開」
社団法人 日本情報システムユーザー協会(JUAS)UISS策定WG 沼田克彦氏 
 2006年6月に発表された情報システムユーザースキル標準(以下、UISS)について、UISS策定WGのリーダーを務められた社団法人 日本情報システムユーザー協会(JUAS) 沼田克彦氏から、UISSの概要と活用方法、今後の展開についてセミナーが実施されました。情報システムの役割が大きな広がりを見せる中で、各企業の情報システム部門は、限られた要員数でその役割を担うことを要求されており、こうした状況を受け、情報システム機能の再認識と、その体制の適正化が必要であることをまず説明されました。そのため、情報システム機能の最適配置及び必要となる人材の把握と育成への寄与を目的に纏められたドキュメントが「UISS」であることを詳しく解説されました。そして、「UISS」が企業に貢献できることとして以下の点を挙げられました。

1)組織力の強化
現行組織が持っている情報システム(IS)機能の確認
組織への要求を果たすために今後必要となる、あるいは無駄なIS機能の確認
現状のIS関連組織の戦力把握(人材ポートフォリオ:Aslsの作成)
今後目標とするIS関連組織の戦力想定(人材ポートフォリオ:ToBeの作成)
ギャップ分析と組織力強化に向けた人材育成・調達戦略の策定

2)人材育成
現状のスキル棚卸し
目標とするスキルレベルとのギャップ分析
ギャップを解消するための個別育成計画策定

 最後に、今後「UISS」が広く普及し、多くの企業で有効に活用されるためには、「導入活用ガイド(仮)」の作成や、「UISS」そのものの精査、「研修ロードマップ」の作成が必要である旨を訴えられました。

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