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特集2:心理カウンセラー岡本英二氏に聞く 企業が従業員の心のケアをトータルに支援する『EAP』プログラムとは 第3回
ビジネスカウンセリング協会(BCA)会長、そったく塾代表
岡本 英二(プロフィール
 企業が従業員の心のケアをトータルに支援すれば、総合的な生産性が上がり、売り上げや、利益率の向上が現実化します。そこで、前々回(第1回)、eラーニングマガジン編集部(以下、編集部)は、『EAP』(従業員支援プログラム)について、心理カウンセラーの岡本英二氏に解説していただきました。今回は、EAPの日本での成功例と、その困難さについて教えていただきました。
 
編集部 鬱とは別の疾患はどうでしょうか。例えば、統合失調症とか、境界例などへの対応はまた別なのですか。

岡本英二氏 すべてケースバイケースで変わってきますね。医療的側面も重要ですが、予防に関しては、「人としてどうやって応援してあげようかという姿勢」がすごく大切ですね。人間として認めてどうやってその人を、より成長させていくのかとか。

編集部 こういうとおおげさに聞こえるかもしれませんが、1つの大きな家族になるということでしょうか。

岡本英二氏 そうですね。例えばお母さんが子供の熱が上がってから気づいていたのでは遅いですね。今日は何となく元気が無いとか、咳が少し多いなとか、食欲が無いとかで早目に気づいて、先手を打つことが大切です。母親は感じているのですが、意識したり考えたりしていないのですね。小さなサインを見逃さず、早目に予防や治療を行うことが重要です。

編集部 具体的なサインを教えてください。

岡本英二氏 最近ため息が多い、寝不足ぎみ、食欲が低下している、下痢が続いている、心から笑えない、食事がまずく感じる、目を余り合わさない、目に力が無いなど、そういうことに気づいてやる。そして、早めに原因を探って対処するとか、ガス抜きをしてやるとかということが大事なんですね。みんな飲みに行ったりすると思いますけれど、それも1つのガス抜き的な側面であっていいと思いますよ。一方、勤怠状況が悪くなる、つまり、遅刻とか欠席とか、早退とか、生産性の低下が現象として現れてしまうともう駄目です。勤怠状況が悪くなる前に元気がなさそうだとか、疲れているよね、ということを早く気づいてやる気遣いが大切です。一番大変なのは管理職なんですよ。

編集部 どのあたりでしょうか。

岡本英二氏 中間管理職ですが、大変なだけ一番病んでいます。

編集部 上と下との板ばさみですね。

岡本英二氏 社会的傾向を見ますと、特にIT業界ですね。急成長を遂げている業界は、若くしてなった中間管理職がとても多いんですね。中には役員とか社長も入っているんですけれど。そして、技術、スキルはあっても、人間的に習熟しておらず打たれ弱い人が多い可能性があるんです。上司としてのスキルを身に付けているか、マインドを身に付けているかというと、そこまででは普通はないんです。昔は本気で責任とるという覚悟を持った上司が多かったですけれどね。今の上司は口先だけで責任をとらないですから。

編集部 若くて中間管理職に抜擢されて、鬱になってしまう人の話はよく聞きますね。

岡本英二氏 私の周囲でも多いです。本当にめちゃくちゃ多いですよ。例えば、プロジェクトにリーダーとして抜擢されて、現場へ行ったらお局様がいていじめられたとか……。そういうケースも本当に多いですよ。女性のほうがある意味陰湿なところがあるような気がします。

編集部 前回と内容が若干重なるかもしれませんが、日本でEAPを取り入れて、成功を収めている会社はありますか。

岡本英二氏 私の勉強不足かもしれませんが、まず大企業ではほとんど聞いたことないですね(2006年12月22日現在)。とりあえずEAPを入れてはいるんですけれども、うまく機能していない状況ですね。カウンセリングをやってもいるんですが、予防として機能しているところは余りないんじゃないかと思います。小さい会社であれば、目が行き届きやすく、いいところはあると思うんですけれど……。確か、IBMなどもカウンセラーが巡回したりしているんですけれど、発生率からいくと間に合わないという話を聞いたことがあります。

編集部 間に合わないとはどういうことでしょうか。

岡本英二氏 何万人も技術者が居るような大企業では、必ず産業医がいますし、カウンセラーもいるんですけれど、3ヶ月先まで予約でいっぱいなのです。3ヶ月待っていたら重度の方は下手をすると死んでしまうかもしれません。だいたいコールから1〜2週間で話を聞かないとやばいなという人があまりにも多いのです。EAPを入れていても、症状の重い人への「対処・治療」に手一杯になり、「予防」として機能しているところはほとんどないと思いますね。経営者も「予防」の発想があまりにも少ないんですね。経費として使うという意識が強いのですが、これは違います。EAPは、戦略的な投資として使ってほしいのです。結果、悪くはならない。人1人が休まなくなって、1人も辞めないとすると、どれだけ収益性が違うか。また、それぞれの人がもっている信用という目にみえない資産があります。それを考慮に入れて計算し、機会損失を考えてみれば、莫大な損失になるとわかるのに、意識を向ける経営者がなかなか少ないのが実情ですね。

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