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特集4:中原孝子が総括・提言する 日本の人材育成・人材開発部門を取り巻く2006年と2007年の課題
株式会社インストラクショナル デザイン 代表取締役 中原 孝子(プロフィール
 

 ■人材もグローバル競争激化

 昨年は、経営的な側面からだけではなく、人材的な側面からもグローバル環境での競争がますます激しくなってきていることを感じさせる年であったと思います。
 中国やインドといったイマージングカントリーのグローバル進出に伴い、日本の企業にとっては、優秀な人材の確保やグローバルな人材育成・開発課題が大きく意識され始めた年だったのではないでしょうか。それに対しては、異文化理解の研修であったり、海外赴任者研修や語学教育の充実があったりという対応、また海外拠点のマネージャー研修の提供などが見られました。
 

 ■組織ビジョンが見えない中でのモチベーションマネジメント

 また、国内では、2007年問題とともに過去10年の人材育成のブランクから、いかに次世代の人材を育成していくのかが急務となっている企業が多いと感じました。組織内の価値観の違いや、ビジョンの浸透不足、コミュニケーションの不足などが多く聞かれました。

 スピーディーに成果を出すことへプレッシャーが大きくなってきている今、「成長感の欠如」や「育成されていると感じることがない」など、働く意欲や動機に関わる問題も多く聞かれました。そして、これらの課題に対してよく聞かれた言葉が「人間力」や「現場力」。 定義があいまいなまま、「人間力」や「現場力」を養うための研修やOJTの仕掛けを作ることが使命となっている人材開発部門もあるように見受けられました。そのような中で、解決策としてマネージャーに対するコーチング研修の導入や制度としてのキャリアカウンセリング、キャリアカウンセラーの配置なども多くの企業で行われたのではないでしょうか。しかし、今人材開発部門に求められているのは、「課題」に対して、「研修や施策(イベント)を企画し、なんらかの対処をしました」という「運営」機能よりも、むしろ、組織課題を支え、経営に貢献するためのより戦略的な経営視点からのアプローチではないかと思います。
 経営的な視点から長期的に求められることの明確化や組織への構造的な人材育成システムの浸透・維持といった、短期的な解決策だけではなく、経営に対してのインパクトも明確に示すことが求められてきており、効果測定を学ぶセミナーや、戦略的人材開発プランニングのコースなどへの参加者の意識や課題のレベルが過去2年とは、大分違ってきていることも実感しました。
 

 ■組織の成長を支えるための経営的視点を持った人材開発部門へ

 2007年は、人材開発に携わる部門にとって、ますます経営的視点からの戦略を考えるためのプロフェッショナルとして、グローバル競争にも対処できるスキルや基本知識をしっかりと身に付けることが求められると思われます。「パフォーマンス改善とはそもそも何なのか」、「組織開発とは何なのか」、「モチベーションマネジメントの考え方」などの学習。そして、それらをどこにどのように使っていくことが戦略的なアプローチになりうるのかを企画するための分析手法の理解や実践。的確な原因分析から打ち出された施策を行い、経営の現場に対しての対策も打っていくことができるようなデータの提示など、いわば社内コンサルタント集団としての能力の拡充が求められるのではないかと思われます。


中原 孝子氏 プロフィール
中原 孝子氏 中原 孝子(なかはら こうこ)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。
その後、慶應義塾大学環境情報学部武藤研究室訪問研究員として、インターネットを利用したデータマインニングやeラーニングなどの研究に携わった。
職歴:米系製造販売会社、金融機関、IT企業にてトレーニングマネージャーとして活躍し、平成14年5月、株式会社インストラクショナルデザインを設立。
会員:ASTD会員、慶應義塾大学環境情報学部研究員

 
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