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特集4:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から \ アナログとデジタルの対立を超えて!
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(プロフィール
 ITの進歩は、「見える化」にとってプラスになるとは限りません。現場ではアナログ的な情報と併用しながら利用していくケースがほとんどです。それがうまく統合されていれば問題はありませんが、そうは簡単にいかないのですね。

 今回はメンバー全員のスケジュールをボード(壁など)に書き込み、アナログ的な「見える化」をしている会社の例から、その問題を検討してみましょう。

■現場での予定情報の共有化における失敗例

 ある会社では、グループウェアでのスケジュール管理も全員がしており、アナログとデジタルが統合しているかのように見えました。外回りの多いメンバーは、主にグループウェアのソフトで自分の計画を全体のスケジュールに合わせていました。一方、内勤スタッフは部屋にあるボードで簡単に修正ができる点から、それをベースに個人のパソコンで予定を管理していました。

 あるとき、内勤スタッフが会議に来ているのに外回りスタッフは誰も来ていないというトラブルが起きます。原因はというと、ボードに修正して書き込んだ内勤担当が、グループウェア側の予定情報を訂正し忘れたのでした。つまり、ボードとITの二重記録をするミスをしてしまったわけですが、図1にあるように、情報のどの型を優先するかという企業文化の問題が含まれています。
■日本の企業文化がデジタルによる「見える化」を妨げる?

 日本の一般的なオフィスは、欧米とちがい大部屋に多人数の社員がおり、窓際を部課長そして入口に近い方が新入社員といった序列ができています。欧米では個人の役割が明確なために各人毎にパーティションで仕切る形で、覗かなくてはメンバーがそこで何をしているかは見えません。この部屋の仕組みの相違はコミュニケーションの仕方にも大きく影響します。そのため、欧米型ではIT化は個人の分析力をベースにしたデータ分析中心の「見える化」へと進化します。

 一方、日本型の大部屋方式では、そこの部門にいるメンバーがお互いの顔が見えやすい配置にして、ボード(壁)に営業情報を書いておくようなことがおきます。そして、業務開始時の朝礼などで、営業成績のよい悪いとかいったことをボード上で示しながら上司がはっぱをかけるといったことをするわけです。そこには、情報は「皆で分かち合う」という「和」の精神に基づく集団活動を重視する企業文化があるといえます。

■アナログV.Sデジタルの解決方法

 以上のようなトラブルは、アナログとデジタルを併用するケースでは頻繁に発生します。だからこそ、一貫した情報の「統合」が重要となりますが、現場では「スピード」と「便利さ」という基準がそれよりも優先されることが多いのです。

 それらを解決するには次のような3つの対策が考えられます。

(1)関係するメンバー全員に修正記入の基準ルールを守らせる
(2)ミスをチェックし調整をはかる仲介役(担当)を置き、そこに情報と権限を集中させる。
(3)高度なITシステムで統合をする。

 とくに(1)の人の意識付け文化の問題、また(3)のコストなどの困難さを考慮すれば、(2)の情報の仲介役をどう活用するかがより重要でしょう。

■見える化の「集中型」と「分散型」の課題

 図2にあるように、営業データなどを見える化するために、それを「集中型」か「分散型」か分けて検討することができます。集中型では情報の仲介役に大きな負荷がかかりますが、データ統合や戦略的な活用はしやすくなります。このタイプは、お客様相談センターと他部門との関係に当てはまるものです。

 一方、分散型では、担当それぞれの負荷は小さいが、データ統合を自らが積極的にする必要があり、他の担当らとの連携や基準の調整が求められます。そのために時間がかかるうえ対応への遅れなどを招く場合もあります。仲介役がいないために、自部門中心の部分最適になりやすいという欠点があるのです。

 このように、集中型と分散型の「見える化」のどちらがよいかということは一律には決められません。実践の場においては、その両方の利点を調和させる形での「見える化」が求められるといえるでしょう。


■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
匠 英一氏 デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
 現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
 著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:takuei@netlaputa.ne.jp

 
 

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