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特集1:平田周の「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」第5回 失点主義からの脱却はあるか
三田教育研究所首席研究員 平田 周(プロフィール
 日本人の評価方法
 前回、日本人が評価を苦手にしていると書いた。そのため、人と人を比較する相対評価や、大勢が良しとするものを良いと評価する風潮、評価が定まったブランド信仰が風靡する。

 アメリカでは、政府機関が大規模な情報システムを発注する際、独立の評価者数人を選び、入札者の提案するシステムについて、定められた評価項目にそれぞれが5点満点の点数をつけさせ、それを合計した総得点で落札を決めるのが普通である。わが国では、この方法は好まれない。項目ごとに採点して総合得点で決めるのは、全体的な判断を見失わせるという危惧があるからであろう。入札者の経歴や実績、一般的能力(知名度であることが多い)などを評価して決める。安いものを選ぶという割り切りも、安かろう悪かろうを恐れて、判断を躊躇する。だから、談合という手段が蔓延するのである。たとえ談合を厳しく罰しても、それに代わる評価方法がなければ、なくなることはないであろう。

 失点主義
 長所を見つけ、それを評価するのはかなり主観的である。独断評価を嫌う一方で、密室の独断評価が行われるのもめずらしくない。評価方法を持たなければ、談合によらないかぎり、誰かが独断で決めることになりやすい。長所、すなわちすぐれた点を見つけて評価すればよいのだが、評価はなかなか一致しない。国民性から、出る杭は打たれるという風潮もある。日本人はねたみの感情が強い。

 そこで登場するのが「失点主義」である。失敗すれば、たちどころに降格、あるいは抹殺される。失敗や欠点なら評価しやすい。批判は大勢の人の賛同を集めやすい。マスメディアで、ある人物をすばらしいと評価して報道すれば異論が殺到するが、失敗者や不正者であれば、異論は出ない。失敗者や不正者を擁護することは勇気が要ることだからだ。

 一度、失敗者、不正者の烙印を押されれば、立ち上がって復活することは相当に難しくなる。だから、政治家も経営者も不正や失敗を隠そうとする。そのためにウソをつく。

 日本の社会が、失点主義をやめ、長所で評価できるようになれば、ずいぶんと変わるだろうと思われるが、すでにくり返し述べたように、長所を見つける評価方法を持たなければ、空論に終わる。

 
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