eラーニングマガジンに関するお問合せ、ご質問等は下記までご連絡ください。
eラーニングマガジン編集部

elmag2@nextet.net

特集1:平田周の「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」第5回 失点主義からの脱却はあるか
 小学校でもすでに失点主義
 教師にすれば、素直で、勉強ができる子は可愛いと思うのは当然である。逆に、成績のよくない子や悪ガキには、どうしてよくなってくれないのかといらだちを覚えるのは人情であろう。なんとかいい子にしたいと教師は奮闘するが、欠点が知られたと思う子はさらに反抗を強めることがめずらしくない。欠点を直そうと考えるより、隠れた才能を見つけてそれを伸ばすべきだといわれるが、どうしても欠点のほうに目が向くものである。

 子どもたちの間でもイジメの対象になりやすいのは欠点のある子だ。普通ではないところが気に障る。勉強ができないのもそうだが、勉強がよくできるのも、そうした子どもたちからすれば"欠点"に見えるのだ。イジメられないためには、すべてに"普通"であることが望ましい。

 小学生の頃から、抜きん出たもの、自分と異なるものを引きずり降ろそうとする気持が広く子どもたちの心の中に宿っているとすれば、わが国の評価方法の文化が簡単に変わるとは思われない。長所を引き出すよりは、欠点を直そうとする教師も、イジメの片棒を担いでいるのかもしれない。

 失点主義からの脱却
 年功序列制よりも、もっと必要性が高いのは失点主義からの脱却ではないだろうか。年功序列制が堅持されるのも、もとはといえば、長所を評価しない、あるいはできない日本人の気質に遠因があるともいえる。

 短所や欠点に焦点をあてて評価するのをやめて、長所を見つけ、それを伸ばす努力をしよう。言うはたやすいが、文化となっているものを壊すには大きな力が要る。メディア自体がそれに組みしているほどだから、これを実行するのは容易ではないと想像される。

 批判が多い成果主義も、成果をあげなかった者が罰せられるから問題なのであって、成果が出せなかった原因をよく調べればそこに力を伸ばす芽が隠されているかもしれない。成果を無視することは、評価することを放棄することにつながりやすい。可能性、あるいは資質で評価すれば、それは知能指数や学歴(学閥)など不公平さを助長することにもなりかねない。努力を評価しない習慣を生む。

 わが国だけでなく、欧米においても「評価」することは難しいものである。
 多数決が絶対に正しいとはいえない。しかし、多数決を否定すれば民主主義を危うくする。年功序列制がよくない、成果主義が悪いと批判する前に、正しい評価はいかにして可能であるかを考えるべきであろう。


■平田周 氏プロフィール
平田周氏 三田教育研究所首席研究員
どうしたら若い人たちの知力、思考力、英語力を高めることができるかを研究しています。大企業、外資系企業、中小企業などでの勤務、ベンチャーの立ち上げ、大学で教鞭など、さまざまな体験をしてきました。元東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科客員教授。専攻:国際情報論。

back
 
 

この記事の感想をお寄せください

お名前:
 (省略可)
メールアドレス:
 (省略可)
コメント:

Copyright©2008 Next Education Think.All Rights Reserved.
掲載の文章・画像の無断使用・無断転載を禁止します。
特集1:平田周の「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」第5回 失点主義からの脱却はあるか
(2)
   
特集2:心理学博士 奥村幸治の“「知る」「分かる」「変わる」科学“ 第4回 〜思っている以上のことを自分は知っている〜
   
特集3:トラブルに巻き込まれない!起こさない!営業担当の法律知識 eラーニングコース サイバックス株式会社 「営業のための法律知識基礎講座」
   
特集4:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から XII 「見える化」の量と質の分析と「顧客ライフサイクル」