RAG(Retrieval Augmented Generation)/その用語、自分の言葉で説明できますか? 新シラバス対応「最新DX用語」解説10回講座 Vol.2

はじめに

前回は「AIエージェント」を取り上げました。生成AIが単に質問に答える存在から、目的に向かって仕事を共に進める存在へと成長したものだと説明しました。では、AIエージェントや生成AIを、実務で信頼して使うためには何が必要でしょうか。

多くの企業で生成AIの活用が進み始めていますが、課題となるのが回答の「正確性」と「根拠」です。一般的な知識には強い一方で、自社独自の制度や最新情報は不正確な可能性がある。この解決策が、「RAG(Retrieval Augmented Generation)」です。
RAGは、生成AIのスペックを向上させるというよりも、より正しい答えをアウトプットさせる仕組みと理解すべきです。今回は、RAGの考え方と事例を解説していきます。

RAGとは何か

RAGは「Retrieval(検索)」と「Augmented(拡張)」、「Generation(生成)」を組み合わせた用語です。生成AIが回答を生成する際に、必要な情報を検索し、その内容を活用することで回答を正確に生成する仕組みのことです。

通常の生成AIは、事前学習した膨大なデータをもとに回答を生成します。回答の元になる内容は、一般的なものが中心です。自社独自の就業規則、商品仕様、最新の社内経営方針といった情報は含まれていないことがほとんどです。

RAGでは、社内データベースやFAQ、マニュアルなど(あらかじめ用意した参照先)から関連箇所を検索し、その内容を手がかりに回答を生成します。
つまり、
通常の生成AI→学習データをもとに回答
RAG→指定した情報を参照して回答
という違いになります。

ポイントは、RAGはAI自体に情報を与えて再学習させているわけではない、という点です。回答のたびに指定した必要な情報を取りに行く。これがRAGの考え方です。

なぜRAGが企業利用で重要なのか

企業業務で生成AIを活用する際、重要なのは「自社の最新情報に合致しているか」です。
例えば、社員から「在宅勤務の申請方法を教えてほしい」という問い合わせがあったとします。通常の生成AIは、学習した内容とWeb上にある一般的な在宅勤務制度を元に回答する可能性があります。しかし自社の規定では、回数制限や承認プロセスなど独自のルールが定められていることがほとんどです。誤った回答が出れば、業務に混乱を招きます。

RAGを導入すれば、社内規程を検索し、該当箇所を抽出し、回答を生成します。結果回答の一貫性が保たれ、最新情報を反映でき、必要に応じて根拠も提示できます。

事例 社内問い合わせ対応

次の事例として、社内問い合わせ対応を考えます。
社員が「交通費の精算期限はいつですか」と質問したとします。RAGを使わない場合、生成AIは学習済みの一般知識の範囲で答えてしまい、自社固有のルールとズレる可能性があります。
一方、RAGを活用した場合は以下になります。

1.社内の交通費規程を検索
2.該当条文を抽出
3.それらを使って回答を生成

こうして、「当社の交通費精算は、利用月の翌月10日までに申請が必要です(旅費規程第12条)」といった、自社に合わせた回答が可能になります。
RAGは問い合わせ対応に限らず、営業提案書作成、商品説明、社内教育など、自社情報を正確に反映する必要がある業務全般に活用できます。

重要点 「学習方式」と「参照方式」の違いを理解する

RAGを理解するうえで混同しやすいのが、「学習」との違いです。
「学習」とは、AIモデルそのものを再学習させ、知識をモデル内部に組み込むことです。一方、RAGは再学習させず、あくまで回答時に指定したAI外部の情報も使って回答させる仕組みです。
この違いで、参照型(RAG)には大きなメリットがあります。 
 
参照方式(RAG)であれば、
情報の更新が容易 (再学習させないため、情報の追加のみで済む)
・不要データの削除が容易 (AIモデルの再学習は不要)
・アクセス権限の制御がしやすい (利用者によって経営データにアクセスできる人、そうでない人を分けることが出来る)

というメリットがあります。
企業利用では、情報の正確性だけでなく、セキュリティや統制も重要です。RAGはその両立を図ることができます。

まとめ

RAGは、生成AIのスペックを高める技術ではありません。生成AIのスペックを向上させるというよりも、正しい答えをアウトプットさせる仕組みと理解すべきです。

ポイント

RAGは「独自情報検索+回答生成」の仕組みであることを理解する

AIモデルにおける学習方式と参照方式の違いを理解する

企業利用では自社情報の正確性と利用者の情報利用の統制が重要であることを理解する

理解を深めるためのもう1Step

生成AIを利用する際、「正しい答えを出させる」ことを考えることが必要です。
「どの情報を根拠に答えさせるか」を常に考えましょう。
 自社の資料やマニュアルを整備し、見出しを付けたり画像があればそれを文字情報で説明するなどAIが参照できる形にすることが重要です。
「AIを上手く使うためには、情報を整備する。」
これを意識することで、RAGの活用が進むはずです。

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。