
はじめに
前回は「MCP(Model Context Protocol)」を取り上げました。生成AIが外部ツールや社内システムとつながり、情報を参照するだけでなく、業務の流れの中で使われ始めている、というお話でした。RAGが「必要な情報を取り出して回答に活かす仕組み」だとすれば、MCPは「AIが必要なツールやデータに安全につながるための共通の入り口」と捉えると分かりやすいと思います。
では次に考えるべきことは何でしょうか。
それは、「AIにどう読まれ、使われるか」という視点です。これまで企業の情報発信は「人に読まれること」が前提でした。しかし今はAIが情報を読み、要点をまとめ、答えとしてユーザーに提示する時代になりました。
今回のテーマは「AEO・GEO」です。生成AI時代の情報発信を考える上で重要になる考え方です。
AEO・GEOとは何か
AEOは「Answer Engine Optimization」、GEOは「Generative Engine Optimization」の略です。
どちらも共通しているのは、「生成AIに答えとして採用されたり、回答を生成する材料として使われたりすることを前提に情報を発信する」考え方という点です。

従来のSEOは、検索結果の上位に表示されることを目指していました。ユーザー(人間)が検索し、一覧の中から選んでクリックすることを想定しています。AEO・GEOは、この想定が変わります。ユーザーが検索結果を読むのではなく、AIに質問し、そのAIの回答を読むイメージに変わってきています。競争の場は「検索一覧の中で選ばれること」から「生成AIの回答に使われること」へ移ってきているのです。
整理すると、
・SEO → 検索結果で選ばれることを目指す
・AEO→質問への回答として使われることを目指す
・GEO → 生成AIが説明や要約を創る材料として使いやすい情報発信を目指す
という違いになります。
なお、AEOとGEOは似た概念ですが、視点が少し違います。
AEOはFAQのように「質問に対する回答としてそのまま使われること」を意識した考え方、GEOは用語解説や企業説明のように「生成AIが説明や要約を組み立てる材料として使われること」を意識した考え方、と捉えると理解しやすくなります。生成AIに回答の素材として使わせるという意味では似ていますが、AEOは答えそのもの、GEOは答えを生成する材料、という違いでとらえると理解しやすいと思います。

なぜ今AEO・GEOが重要なのか
生成AIの利用が広がり、ユーザーの行動が変化してきています。
例えば「おすすめの旅行先」「法人向けおすすめ会計ソフト」「MCPとは何か」といった調べものをする際、検索して複数サイトを見るのが普通でした。今は生成AIに聞いて、すでにまとめられた答えを読むケースが増えています。
このとき、ユーザーは「どのサイトを見たか」をほとんど意識しません。
AIがまとめた答えを読むからです。
つまり、情報発信の競争はユーザーに「クリックされる競争」から生成AIが回答を生成する際に「自社情報を答えに採用される競争」へ変わってきているのです。
ここで重要になるのがAEO・GEOです。長いだけの説明、広告色の強い表現、情報が古いまま放置されたページは、AIにとって扱いやすいとは言えません。結論がはっきりしていて、内容が整理されており、頻繁に更新されている情報は、AIにも人にも使いやすいものになります。
身近な事例
例えば企業がホームページで、自社の商品やサービスの説明をしている場面を考えてみましょう。従来は検索結果から記事を見つけてもらい、サイトを読んでもらうことが重要でした。そこで重視されていたのは、検索されやすい言葉を入れることや、クリックしたくなる見出しをつけることでした。
しかし今は、生成AIが複数のサイトの情報を読み取り、ユーザーへの回答としてまとめたものを提示します。
このときAIが使いやすいのは、
・サービスの定義や内容が明確である
・見出しと本文がはっきりしていて内容が一致している
・FAQで問いと答えが整理されている
・料金、対象、特徴などの基本情報が分かりやすい
・最新の情報が掲載されている
といったページです。
逆に言いたいことがまとまっていない長い説明、見出しと本文の内容がずれている、更新されていない古い情報が混じっている、広告的な表現などはAIにとって扱いにくくなります。
AEO、GEOを意識した情報発信のポイント
どのような情報発信がAEO・GEOにつながるのでしょうか。
まず「結論が明確であること」です。回りくどい表現ではなく、最初に要点が分かることが重要です。
次に、「構成が整理されていること」です。見出しや箇条書きで整理されていると、AIが理解しやすくなります。
そして、「内容に一貫性があること」です。ページごとの内容に矛盾がないことが重要です。
これらは人にとっても読みやすい条件ですが、AIにとっても同様です。
最後に重要なのが情報を継続して更新することです。FAQを見直す、用語説明を改善する、最新の更新日を明記する。地道に整備し続けることが重要です。
まとめ
AEO・GEOは、生成AI時代の情報発信の重要な考え方です。情報発信の前提は「人に読まれる」だけでなく、「AIに読まれ、回答に利用される」へと広がっています。
SEOが不要になるわけではありませんが、それだけでは不十分です。
AIに選ばれる形で情報を整えることが、これからの競争力になります。
企業にとっては、FAQや用語解説、基本情報の整理が重要になります。
「正しく」「分かりやすく」「整理された」情報を継続的に発信することが求められます。
ポイント
AEO・GEOは「AIの回答に使われること」を目的とした情報発信の考え方
AEOは答えとして使われること、GEOは答えの材料として使われやすくすることを重視する
結論の明確さ・整理された構造・情報の更新が重要
自社のホームページや資料を見直してみてください。
「この内容はAIがそのまま使いやすいか」という視点で見ると、改善点が見えてきます。
たとえば、
・用語の説明が短くはっきり書かれているか
・見出しと本文の内容が一致しているか
・FAQで問いと答えが分かりやすく整理されているか
・古い情報がそのまま残っていないか
といった点です。
まずはFAQを一つ、短く分かりやすく書き直してみてください。
それだけでも、AIにも人にも伝わりやすい情報発信に一歩近づきます。

DXビジネスアンバサダー
岸 晶子
きし あきこ
都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。
