ショート動画/動画・音声生成AI/その用語、自分の言葉で説明できますか? 新シラバス対応「最新DX用語」解説10回講座 Vol.8

はじめに

前回は、「ゼロトラスト」「多要素認証」「サイバーリスクマネジメント」を取り上げました。AIやクラウドを便利に使うには、まず安全に利用できる状態にする必要がある、という内容でした。

デジタル活用では、安全に使えることに加えて、必要な情報を相手に分かりやすく届けることも大切です。
今回のテーマは、「ショート動画」と「動画・音声生成AI」です。ショート動画を中心に、その制作を支える技術として動画・音声生成AIを解説します。

ショート動画とは何か

ショート動画とは、短い時間で、結論や使い方、魅力、雰囲気などを伝える動画形式のことです。

従来の会社紹介、商品説明、研修教材などは、ある程度まとまった時間を使って見てもらうことが前提でした。しかし、相手が情報を見る時間は限られています。そこで、冒頭で関心を持ってもらい、短時間で要点を伝えるショート動画が使われるようになっています。
ただし、長い説明をそのまま短くしたものではありません。短い尺に多くの情報を詰め込むと、かえって分かりにくくなります。

大切なのは、最初に知ってほしい内容をあえて絞ることです。商品紹介ならその一番の特徴を伝える。社内教育なら、最初に必要な操作を解説する。採用なら、まず職場の雰囲気を知ってもらう。

動画には、商品の動き、操作の手順、話す人の声など、文字だけでは伝わりにくいことを届けられる良さがあります。

一方、詳しい条件や例外など、詳細な説明まで短い動画だけで伝えることは難しい場合もあります。ショート動画は、詳しい情報の代わりではなく、資料を読む、募集要項を見る、問い合わせをするといった次の行動につなげる導入部として使うのに向いています。
そのため、動画を作る前に考えるべきことは、「誰に、何を伝え、見た後に何をしてもらうのか」です。再生回数を増やすことだけを目標にせず、その後の行動まで考えることが重要です。

制作を支える技術 動画・音声生成AI

こうしたショート動画の制作を技術面で支えるのが、動画・音声生成AIです。
動画生成AIとは、文章、画像、音声、台本などをもとに、映像や動画素材を作るAIであり、音声生成AIは、文章を読み上げるナレーションや会話音声を作るAIです。
これまで動画を作るには、企画、撮影、編集、ナレーション収録、字幕作成など、多くの作業が必要でした。生成AIを使うと、台本案を作る、字幕を付ける、ナレーションを作る、画像や映像素材を用意するといった制作工程の一部を効率化できます。

動画・音声生成AIは、ショート動画だけに使うものではありません。長い研修動画、資料の要点を音声化した教材、商品説明に使う映像素材などにも活用できます。
ただし、AIに任せられるのは制作作業の一部です「誰に、何を伝えるか」「どの情報を入れ、何を割愛するか」を決めるのは、あくまでも人です。AIによって動画づくりのハードルは下がりました。しかし、人に理解してもらえる動画になるかどうかは、内容を確認する人の判断にかかっています。

ショート動画作成の流れ

身近な事例 社内教育動画をAIで内製する

新しい経費精算システムを導入し、全社員に使い方を説明する場面を考えてみましょう。
まず、この動画を誰に見てもらい、何を理解してほしいのかを決めます。ここでは、「全社員に、最初に必要な三つの操作を覚えてもらう」とします。
次に、生成AIに1分程度の台本案を作らせます。担当者が社内ルールや実際の操作と照らして内容を確認、修正し、音声生成AIでナレーションを作ります。画面の操作映像や図解、字幕と組み合わせれば、短い教育動画ができます。
詳しい条件や例外はマニュアル参照とし、動画は最初に必要な内容に絞り込みます。動画を見た後に、不明点は詳しいマニュアルを確認してもらう流れを作れば、短い動画と詳しい資料を役割分担させることができます。
この方法なら、利用者は最初に全体像をつかみ、必要なときに詳しい内容を繰り返し確認できます。制作側も、制度や操作方法が変わった部分の見直し作業がしやすくなります。

ショート動画作成で注意すべきこと


一つ目は、短くすることで誤解が生まれないか、という点です。背景や条件を省きすぎると、本来必要な注意事項が伝わりません。動画だけで完結させず、詳しい説明への導線を用意することが大切です。
二つ目は、画像、映像、音声などの権利です。他人の画像やキャラクターを無断で使ったり、本人の許可なく声や顔をまねたりしてはいけません。著作権だけでなく、肖像権や商標、BGM等の利用許諾にも注意が必要です。AIで本物のような映像や音声を作るディープフェイクはなりすましや誤情報の拡散にも使われるため、特に注意が必要です。
三つ目は、内容を必ず人が確認することです。商品説明、採用、広報、社内教育など、ビジネスの発信では誤りや誇張表現が信用を損なうことがあります。
生成AIで作れることと、公開してよいことは同じではありません。内容の正確性、権利、社内ルール、自社らしい表現を確認してから公開する必要があります。

まとめ

ショート動画は、短かい尺に情報を詰め込んだものではありません。最初に伝える内容を絞り、相手の関心を引き、詳しい情報や次の行動につなげるための情報発信の形式です。
動画・音声生成AIは、台本、字幕、ナレーション、画像や映像素材などの制作を助け、動画づくりのハードルを下げる技術です。ただし、誰に何を伝えるかを決め、内容を確認するのは人の役割です。
文章で詳しく説明する、映像で動きや雰囲気を伝える、音声を聞くことで理解しやすくする。それぞれの良さを使い分け、相手に届く表現にすることが重要です。

ポイント

ショート動画は、詳しい情報へ進んでもらうための導線

動画・音声生成AIは、ショート動画などの制作を助ける技術

短くすることで生じる誤解、権利、正確性を人が必ず確認する

理解を深めるためのもう1Step

自分の仕事で、説明が長くなりがちな資料を一つ選んでください。
「最初の3秒で伝える結論」「30秒で伝える要点」「見た後にしてほしい行動」に分け、短い動画の台本をAIで書いてみましょう。
実際に動画を作らなくても、台本にするだけで、何を一番伝えたいのかが見えてきます。

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。