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特集1:画一的コンテンツとしてのeラーニングからテーラーメイドへ eラーニングに求められる機能の変化を考える

■スキルオブジェクトの見極め


 上記のような個人のスキルギャップにフォーカスしたテーラーメイドの研修にeラーニングを活用するための次のステップは、「スキルオブジェクトの見極め」です。アメリカでは、どのコンテンツ内容のどの部分が、要求されているスキル習得のための単位となっているのかを分類・定義する作業を可能にするラーニング コンテンツ マネジメント システムに対する需要が急速に高まっています。これまで提供されてきた研修やeラーニングコンテンツの内容をそれぞれのスキルオブジェクトに分解し、個人のスキルギャップ、または各部署や現場に合わせた学習内容を提供したり、再活用したりするためです。また、それによって作りこみが必要となる研修コンテンツは、汎用コンテンツでは対応ができないそれぞれの企業や現場特有の要求事項の場合多くあります。カスタマイズだけでは対応できないこれらのコンテンツに対応するため、MSパワーポイントのプレゼンテーションを作成するくらいの容易さでeラーニングコンテンツの作成を可能にするオーサリングツールも出てきており、現場のSME(Subject Matter Expert:業務熟達者、専門家などと訳される。インストラクショナルデザインではよく使われる用語の1つ)にeラーニングコースのコンテンツを拠出してもらい、現場のスキルの継承を図ろうとしている企業も増えていることを、Brandon Hall によるリサーチでも指摘しています(http://www.brandon-hall.com/)。
 

■行動変容へのインパクトを測る


 以上のようなプロセスを経てeラーニングや研修を提供した場合、どのような仕事に対してどのような行動の変化がもとめられるのかが明確になるため、何を測定すべきかの基準値を決めることも比較的容易になるでしょう。ただし、これらのステップを実際に組織的に実行するためには、LMSなどの機能強化によるシステムの充実以上に、組織におけるeラーニングを含めた「研修」戦略への理解と、達成目標の共有が前提となります。
 

■ラーニングテクノロジー選択のチェックポイントの多様性


 7月20日から22日の3日間、東京ビッグサイトにて開催されたeラーニングワールド(eラーニングを紹介するイベントではアジア最大級のもの)に感じられた変化は、ASTD(American Society of Training and Development:人材開発のグローバルトレンドや人材育成のベンチマークを得るための機会として、多くの参加者が集まる世界的カンファレンス)におけるeラーニングセッションへの変化と同様に、定着期であるが故のさらなる質の向上と専門性、そしてより現場や個人のパフォーマンスに主眼を置いたアプローチの必要性を示していたのではないでしょうか。

 eラーニングを選択する企業側にとっても、eラーニングに関わるテクノロジーやコンテンツを提供する業者にとっても、コンテンツとしてのeラーニングやコンテンツ配信と履歴をとるためのLMSの選択という観点からだけではない、eラーニング環境の選択や構築が必要となってきています。

研修の戦略的な位置づけの観点
人材マネジメント
キャリアマネジメント
コンピテンシーマネジメント
スキル定義や基準
パフォーマンスサポート
ブレンディング
行動変容や組織の経年変化を知るための基準値や測定
それらに関わるオペレーション
組織全体の人材育成に対する意識・モチベーションの向上
そして予算、人員リソース
上記の各視点からの考慮やそれに対応できるフレキシビリティー

 これからeラーニング環境をより有効に活用しようとする企業の人材開発担当には、以上のようなチェックポイントを自社の環境や戦略と兼ね合いで考慮する必要があるのではないでしょうか。

 次回は、2005年ASTD国際カンファレンスの中のセッション"Clents are from Mars, Venders are from Venus" ( by Karl M. Kapp)を参考に、このような複雑な人材開発環境におけるラーニングマネジメントやeラーニングテクノロジーの導入や運営の際に起こっているeラーニングテクノロジー提供側(ベンダー)と企業の人材開発担当(クライアント)のコミュニケーションギャップについて、考えてみたいと思います。

中原 孝子氏 プロフィール
中原 孝子氏 中原 孝子(なかはら こうこ)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。
その後、慶應義塾大学環境情報学部武藤研究室訪問研究員として、インターネットを利用したデータマインニングやeラーニングなどの研究に携わった。
職歴:米系製造販売会社、金融機関、IT企業にてトレーニングマネージャーとして活躍し、平成14年5月、株式会社インストラクショナル デザインを設立。
会員:ASTD会員、慶應義塾大学環境情報学部研究員

 
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