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特集1:平田周の「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」第4回 年功序列制は容易には崩れない
 若者は年功序列制に反旗をひるがえす
 私も、20歳代、30歳代の頃から、年功序列制はけしからんと思ってきた。自分よりも明らかに能力が劣っている人が上の地位におり、収入もはるかに多い――不合理ではないか。そう思って、38歳で独立した。定年まで勤めるのが普通だった昭和40年代だったからめずらしがられた。

 日本の中小製造業は優秀である。戦後、大企業を飛び出して自分の会社を起こした人、いうなれば今日のベンチャー起業家は、高卒ながら頭が良く、腕にも自信があるエンジニアが多かった。高卒者であれば、会社に一生勤めても、学歴がものをいう組織の中では偉くはなれないということを知っていた。だから独立する道を選んだ。

 年功序列制に反旗をひるがえすのは、能力的自信と報酬だといっていいであろう。最近は、能力でもなく、報酬でもなく、ただ自分には合わないというだけで辞める若者も増えているようだが……。

 自分には力がある、もっとそれを活かす場があるはずだ。自分はもっと高い報酬が得られる、と確信した時に、人は年齢とは無関係に会社を辞める。 もちろん、それを実現できる環境があってのことである。昔は、転職は不利だった。しかし、いまは転職者が歓迎される(入社してからは差別もある)時代だけに、若くして会社を辞める者が増えても不思議ではない。

 十代で1億円もの収入を得ることも不可能ではないスポーツ選手や芸能人がいる時代である。定年近くなっても年収が1千万円を超えるかどうかというのでは、早くやめて独立しようと考えるのも無理はない。終身雇用さえ保証されない今日である。

 年功序列制は崩れない
 では、年功序列制は崩れるか。確かに、年齢が逆転した上司と部下という関係は増えている。年下が年上の者を管理するケースもさほどめずらしくはなくなっている。しかし、年功序列制が根本から崩れることはないであろう。その理由は、儒教的な道徳観念が日本人の中に根強く残っている以外に、先に指摘したように、日本人が絶対評価を苦手とする文化を背負っているからにほかならない。

 名前の呼び方一つをとっても、年功序列制では、目上には「さん」、下の者には「くん」で呼ぶ風習がある。上司と部下の関係で年齢が逆転しても、この呼び方が変わらなければ、部下を管理する威厳は薄れる。役職名で呼ぶことで混乱を避けるであろうが……。

 一つの可能性は、出自や身分、学歴などとは異なる新たなクラス分け(キャリアなど)がなされ、その中では年功序列が維持されるが、階層間では年功序列制は崩れるという形ではないかと想像される。

 年功序列制はなくならないものの、一定年齢以上の者が地位や組織から離れるということも起きる可能性が高い。明治維新は、江戸幕府の重鎮たちが追放され若い人材が新政府を打ち立てた。第二次大戦の敗戦により、年配の指導者たちが占領軍によりパージされ、40歳代が政治や産業をリードした。
いま、そのサイクルからいって、若返りが起きる可能性を秘めた時代が到来しつつある。高齢社会の実現と矛盾するようであるが、高齢者たちは、長寿により新たな人生を見つけ、そこで生きようとするのではないか。

 年功序列制は崩壊しないが、世代的な若返りは産業界においてありうる。


■平田周 氏プロフィール
平田周氏 三田教育研究所首席研究員
どうしたら若い人たちの知力、思考力、英語力を高めることができるかを研究しています。大企業、外資系企業、中小企業などでの勤務、ベンチャーの立ち上げ、大学で教鞭など、さまざまな体験をしてきました。元東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科客員教授。専攻:国際情報論。

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