ヒューマノイドロボットの現状と日本企業の取り組み/身近な事例で学ぶ「DX×ビジネス」ビジネスパーソンと学生のためのデジタル変革ガイド Vol.24

はじめに

ヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)の進化は目覚ましいものがあります。
特に中国では、高齢化や人手不足への対応に加え、AI・ロボット産業を次世代の成長産業として育成する国家戦略のもと、ヒューマノイドロボットの開発が推進されています。

今回は、そんなヒューマノイドロボットの現状と日本企業の取り組みについて、独自の視点を交えながら紹介したいと思います。

世界ヒト型ロボットスポーツ大会1日目


2026年8月に中国で開かれた「世界人型ロボットスポーツ大会」では、中国のヒューマノイドロボットが、ウサイン・ボルト選手の100m走世界最速記録を超えたことなど大きなニュースになりました。
100m走を全力でゴールまで走り抜けたロボットは、次々にクッション用のマットにぶつかっていきます。破損して炎が上がる様子も報道されました。
担架で運ばれていく壊れたロボットを見ると、思わず「かわいそうだな」という気持ちになってしまいます。
(※動画の9分14秒頃から)

一方、マットにぶつかっても倒れずに、持ちこたえたロボットには大きな拍手が送られました。
(※動画の10分40秒頃から)

また、ロボットが器用にテニスをやっている姿にも驚かされました。
(※動画の5分30秒頃から)

私はバレーボールをやっているのですが、より高度な空間認識が求められるボールゲームは、ロボットにはまだハードルが高いだろうと考えていたからです。

垂直ジャンプは既に人間を超えていますし、今後、3次元の空間認識能力がさらに進化すれば、強烈なジャンプサーブを打つロボットの登場も近いかもしれません。

参照:【詳報】陸上100mでウサイン・ボルト超え 中国で「世界人型ロボットスポーツ大会」開幕(共同通信 KYODO NEWS):2026年9月時点
https://www.youtube.com/watch?v=KxzASDMcE88

世界ヒト型ロボットスポーツ大会2日目

大会2日目では、走り幅跳びでのロボットの跳躍力に目を見張るものがありました。しかし、私がさらに驚いたのはその着地の見事さです。
(※動画の3分34秒頃から)

さらに、これは陸上競技だけでなく、サッカーなどでも見られましたが、倒れてしまっても自律的に体勢を立て直す技術が特に秀逸だと感じます。

参照:【詳報】中国ロボットスポーツ大会2日目 技術進化アピール(共同通信 KYODO NEWS):2026年9月時点
https://www.youtube.com/watch?v=E2empqOEkwk

世界ヒト型ロボットスポーツ大会3日目

大会3日目、私が特に注目したのは障害物競争でした。
様々な障害物を乗り越え、くぐり抜けていくその様子は、まるで「ロボット版SASUKE」を見ているかのようでした。
(※動画の2分25秒頃から)(※動画の3分13秒頃から)

足場の形状や材質の違い、あるいは不安定なシーソーのような難所でも、バランスを崩さずに動いていく様子を見ると、こうした高い適応力こそ、将来的に災害現場や作業現場など、より実践的な場面でロボットが活用される際に役立つ機能だと感じます。

参照:【詳報】中国ロボットスポーツ大会3日目 陸上障害やチアリーディング(共同通信 KYODO NEWS):2026年9月時点
https://www.youtube.com/watch?v=6Vd7DYY5Ufk

世界ヒト型ロボットスポーツ大会4日目

5日目大会4日目は、綱引きなども行われました。
綱引きなら、私たちでもまだ勝てそうな気がして少し安心します(笑)。
(※動画の1分00秒頃から)

一方で、100m走でゴール後に大破するロボットが多いなか、走り方は不格好ですが、ゴール後にスピードを落として、壁の直前で止まるロボットもいました。
(※動画の7分24秒頃から7分34秒頃まで)
大会を通じて、人間を超える記録や運動能力、あるいは大破して炎が上がる派手なシーンが注目されがちですが、今後は単にスピードを追求するだけではなく、こういった緻密な制御技術こそ求められていくのではないでしょうか。

こうして5日間の演技や閉会式を経て、中国ロボットスポーツ大会は閉幕しました。
5日間に渡りこうした大規模なイベントをやり切る事実そのものが、今の中国の実力を物語っていると思います。
さらに驚いたことは、今年の大会では、400m走や1500m走など、複数の競技で「完全自律」が競技条件として導入された点です。
また、ヒューマノイドロボットではないのですが、会場の外で四足歩行ロボットが子供を乗せて歩く様子も披露されました。
今後はそういったアトラクションもどんどん増えていくのかもしれません。

参照:【詳報】中国ロボットスポーツ大会4日目 綱引きや100m走など熱戦(共同通信 KYODO NEWS):2026年9月時点
https://www.youtube.com/watch?v=o_B499MSnLM

日本から唯一参戦した「ひとみん」:GMOインターネットグループ

ここからは、日本企業の取り組みを紹介します。

GMOインターネットグループの陸上部は、第102回箱根駅伝の5区で驚異的な区間新記録をマークし、「シン・山の神」と呼ばれた青山学院大学出身の黒田朝日選手も所属していることでも知られます。同グループでは、陸上部の選手の走行データを学習させたヒューマノイドロボットを開発しています。
私は同グループのロボットが、陸上競技の世界大会に出場し、優勝を目指すとの記事を読んだことがあったので、大会への出場を期待していました。
そのGMOインターネットグループが走行制御ソフトウェアを開発したヒューマノイドロボット「ひとみん」がついに、今年の世界ヒト型ロボットスポーツ大会に日本で唯一参加しました。
他のロボットが、競走用専門に開発されているなか、「ひとみん」は、あえて汎用型のロボットで出場したそうです。これは成績のみを重視するのではなく、実社会実装を見据えた取り組みと言えるでしょう。

GMOインターネットグループ陸上部

「GMO AI&ロボティクス商事、世界初・完全自律走行で駅伝日本一の走りをヒューマノイドロボットに再現『GMOインターネットグループ陸上部 – GMOロボッツ』始動」(GMOインターネットグループ)より引用
https://ai-robotics.gmo/news/article/gmo-robots/

「ひとみん」は400mのトラック走を見事完走した直後、モーターの熱の影響で倒れてしまいました。
私はてっきりロボットは疲れ知らずだと思い込んでいたのですが、熱によって動きが止まってしまうと聞き、「なるほど」と納得させられました。
しかも、このモーターの熱の影響については、「ひとみん」が競技に出場するための試験過程で初めてわかったとのことで、まさに大会への参戦自体が、貴重な学びにつながった好例だと思います。

現在、AIの普及に伴うデータセンターの冷却が大きな課題になっていますが、物理的な発熱は、ヒューマノイドロボットにとっても避けて通れない重要な問題なのだと、再認識した次第です。

なお、GMOインターネットグループは、中国のロボットメーカーであるUnitree Robotics(宇樹科技)が開発したヒューマノイドロボットをベースに、ソフトウェアを開発しています。
結局、中国のロボットではないかとのコメントも一部見受けられましたが、私の考えは全く異なります。
先進的な中国のロボットをベースにしながら、独自のソフト面を磨き上げていくというのは、現時点ではとても現実的な解です。私は一歩でも先を目指しているGMOインターネットグループのチャレンジに大きな拍手を送りたいです。

参照: GMO AI &ロボティクス商事、世界初・完全自律走行で駅伝日本一の走りをヒューマノイドロボットに再現、「GMOインターネットグループ陸上部 – GMOロボッツ」始動 〜GMOインターネットグループ、トップアスリートの走行データ活用で実証実験を開始〜(GMO AIR):2026年9月時点
https://ai-robotics.gmo/news/article/gmo-robots/

参照:【詳報】世界人型ロボット運動会 日本から唯一参戦「ひとみん」400mと1500mを完走 北京【知ってもっと】【グッド!モーニング】(2026年8月24日)(ANNnewsCH):2026年9月時点
https://www.youtube.com/watch?v=f032JI60oBo

準国産コンパクトヒューマノイド「D1」:ZEALS

次に紹介するのは、日本国内でAI・ソフトウェア・制御・組立などを主導する準国産コンパクトヒューマノイドロボットの「D1」です。

ジールス、“準国産”コンパクトヒューマノイド「D1」を発表

ジールス、“準国産”コンパクトヒューマノイド「D1」を発表〜年度内に100台量産、人手不足の現場で10,000時間稼働を目指す(ZEALS)より引用
https://zeals.ai/news/d1-launch-2026


「D1」は日本主導で開発・組立する「準国産」ロボットで、できるだけ日本国産の部品や装置を使って生産していますが、コスト面や性能面を考慮し、必要な部分は外国製の優れた部品も柔軟に取り入れています。

すべてを国内調達するのではなく、あえてこうした選択をとっていることから、同社ではこれを「準国産コンパクトヒューマノイド」と呼んでいます。
見た目のカッコよさや、アクロバティックな動きではなく、屋内空間で活動することを前提とした、小回りの利くコンパクトさと、安全性を重視したロボットを開発しています。

CEOの清水正大氏は、インタビューの中でロボット開発にかける思いを語っています。
本当の意味で社会の役に立つロボットを開発したいという思いや、最終的には「準」ではなく「純」国産ロボットを目指したいという考えやその現実的なロードマップなど、非常に共感できる内容です。
是非、下記のリンクから参照してみてください。

参照:準国産コンパクトヒューマノイド「D1」|CEO インタビュー(Omakase AI – ZEALS):2026年9月時点
https://www.youtube.com/watch?v=tiJSiKTEyRA

参照:ジールス、“準国産”コンパクトヒューマノイド「D1」を発表〜年度内に100台量産、人手不足の現場で10,000時間稼働を目指す(ZEALS):2026年9月時点
https://zeals.ai/news/d1-launch-2026

さいごに

客観的に見ても、現在のヒューマノイドロボット開発においては、日本は中国に大きな後れをとっていると言わざるを得ません。
しかし、製造業でのフィジカルAI導入も着々と進んでいますし、今回ご紹介したような日本企業が持つ「実社会の役に立ちたい」という熱意と緻密なアプローチは、必ずや大きな実を結ぶと私は信じています。
その発展を、これからも心から期待し、応援していきたいと思います。

今回学んでほしいポイント

  • ロボットの派手なパフォーマンスや記録だけでなく、制御技術や社会実装の観点で見ることの大切さを知る
  • 新たなことに挑戦したからこそ見えてくる課題(フィジカルAIにおける発熱問題など)を通じて「Fail Fast」の大切さを知る
  • 現実的なロードマップと強い信念を持って、社会実装に向けたロボット開発に挑む企業の姿勢を学ぶ

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この記事の著者

株式会社Live and Learn 講師 DXビジネスエヴァンジェリスト

福島 仁志

ふくしま ひとし

この記事の著者

[DXビジネス・プロフェッショナルレベル認定2023] 株式会社Live and Learn講師 東京都在住。 新卒でNTTに業務職として入社。 顧客応対業務やシステム開発、法人営業の業務に従事したのち、 2016年にNTTを早期退職。2017年より株式会社Live and Learnで主に研修講師やコンサルティング業務に従事。 「消費生活アドバイザー」「ITILエキスパート」「ビジネス法務エキスパートR」などの資格を持つ。 趣味はバレーボール、プロレス観戦など。