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DX時代の「イノベーション人財」の「人間力」とは
【連載「人間力講座」その4】
DX時代の「イノベーション人財」の「人間力」とは
執筆:ネクストエデュケーションシンク 代表取締役 斉藤 実
いま企業のリーダーに必要な能力として「人間力」が注目されています。
この「人間力」という言葉は、ビジネスシーンだけでなく政治やスポーツ、芸術など、様々な分野でも言われ、「優れたリーダー達が持っている高い人間性からなる能力」という広い意味で使われています。
ここでは、企業の経営者や役員、幹部、事業部長、部長、課長、マネージャという部下をお持ちのリーダーの方々が備えているべき「人間力」にフォーカスしてお話ししたいと思います。
DX時代の事業のライフサイクルの短期化とイノベーション人財が必要な時代
米国では、GAFAに見られるように、Web上のサイバー空間上に魅力的な独自のビジネスプラットフォームを構築して直接ユーザーを囲い込み、そこでスマホやPCから誰でも簡単にアクセスができて、スピーディに検索や商品の購入などができるようになりました。その仕組みは、リアル市場を超えてインターネットを介して世界にも急速に広がり、様々なビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)が、生物の進化で言う「カンブリア紀」にも似た様相で、多種多様なDXビジネスが花開くことになりました。
中国もまた、米国のデジタルビジネスでのイノベーションの仕組みを倣って、BATHと言われる企業が次々に立ち上がり、14億の中国の市場規模をバックに強大な進化を進めて、今や世界市場へとビジネスを拡大しつつあります。
二大国の国家戦略からどちらも負けられない覇権をかけて、インターネット・サイバー空間上では、米国圏と中国圏とのDXビジネス・プラットフォームの新たな世界市場獲得競争が勃発し始めています。
そうした世界のビジネスのトレンド、VUCAと言われる不確実な時代の世界経済の変化を背景に、我が国の企業もまた、デジタルを活用したDXビジネス変革が求められる時代となりました。
このDX時代に入り、企業の寿命は、従来と比べてますます短期化してきています。
デジタル変革したビジネスは、人の経験や感性、熟練度に依拠したレガシーとされるアナログなビジネスの時代と違って、デジタルデータや、プラットフォームごとコピーすることも比較的容易で、せっかく先進で価値創造した新ビジネスモデルもまた、時代や技術の進化も相まって、後発の改善ビジジネスモデルによって早期にディスラプション(破壊)されることなども起こり、新事業の寿命は、さらに短期化していくことになります。
「DX時代の成長のための事業ライフサイクル図 (©NET)」をご覧下さい。
従来の事業モデルが仮に30年程度の寿命があるとすれば、その従来事業が成長期を経て、衰退期に入る前に、企業の成長カーブが伸びずに停滞の予兆を感じた段階で、次の新たなDXビジネス・イノベーションを企画し新規投資をして、次代のビジネス価値創造を含む新事業を起こして、その後も継続的に価値創造を繰り返していき、A+B+C・・と事業を多様化拡大して、企業の総合的なビジネスグロスを継続成長させていくことが、これからのDX時代の企業の経営戦略として必須の時代となってきていると言えるでしょう。
その時、企業のビジネス価値創造を伴う発展に欠かせない人財が、「イノベーションを起こせる人財」です。
イノベーション人財の「コンピテンシーセット」とは
『イノベーションのDNA』で、著者クレイトン・クリステンセンは、「アマゾン」のジェフ・ぺゾスや「セールスフォース」のマーク・ペニオフなど、現在の成功ビジネスモデルを創った多数のイノベータ達にインタビューを行い、「破壊的なイノベータ達」には特有の能力があることを見出します。
それは、前提として主体的にイノベーションに取り組む「勇気(自らリスクを取る)」を持つとともに、行動的なスキルとしての<1>「質問力」、<2>「観察力」、<3>「ネットワーク力」、<4>「実験力」を発揮して、それらを組み合わせて革新的なビジネスアイデアを導く<5>「関連づけ思考」の5つの共通したスキルを持っていると言います。
それに対して、大手企業に所属する経営幹部は、<1>「分析」、<2>「企画立案」、<3>「行き届いた導入」、<4>「規律ある実行」の4つの「実行力」が秀でているとして、得意とする能力分野が異なっていると言います。
私も実際、各種人財アセスメントを活用して国内企業のDX(デジタル)手法の組織分析を相当数行って「イノベーション人財」の持つコンピテンシーの特徴を見ていくと、確かに「クリステンセン・モデル」の能力要素と呼応しており、日本では「破壊的」とまでは言えないにしても、どこかで人とは異なる尖ったところがある人財も多く、前提となる資質・意識としては、「好奇心」「質問力」「主体性」「責任意識」「勇気(リスクテイキング)」「観察力」「問題意識」「革新性」「チャレンジ精神」「共感力」「創造性」などが高く、「概念化志向」「本質を見極める力(洞察力)」「先見性」「大局観」「価値創造」などのコンセプチュアルスキル系の要素が、全体平均より相当高く突出しています。
「イノベーション人財」の発掘、採用、育成、登用
従来の一律に優秀とされた人財の採用・育成とは異なり、これからのDX時代の企業における多様な「イノベーション人財」の発掘、採用、育成、登用、適材適所活用、組織開発などには、まさにこれらの「コンピテンシーセット」を、各人がどのような組み合わせで強みとしているかを的確に把握して、自ら主体的にやりがいが持てるように工夫し、組織としてビジネスイノベーションを起こせるように、多様な人財の特長・個性を理解して得意を生かして活躍できるように育てていくことが人財戦略のキーであると考えています。
経営幹部層のコンピテンシーセットは
特に、日本の大手企業の経営幹部層がもつ特徴は「イノベーション人財」とは異なり、「協調性」「社交性」「創造性」「コミュニケーション力」「リーダーシップ」「自信」「責任感」「決断力」「行動力」「論理性」「規律性」「慎重」などの資質や意識が特に高く、「課題発見力」「分析力」「課題解決力」「計画立案力」「実行力」「事業実現力」「ネゴシエーション」「マネジメント力」などの組織運営、ビジネス実践力につながるコンピテンシーが高い傾向が出ています。
まさに「クリステンセン・モデル」の分析とも一致しています。
大手企業は異なる人財の相互補完が重要
この分析結果から見る限り、DX時代に企業がビジネスでイノベーションを起こし大きく成功・発展していくためには、両方の異なるタイプの人財の相互協力が必要となると言えます。
「イノベーション人財」だけでは、新しいビジネス発想・アイデアを打ち立てることは可能であっても、それを他社に先駆けてスピーディに具現化しビジネス戦略を立て、継続的に収益を上げていけるビジネスの仕組みを構築し、組織や人を纏めて運営していくことは、異なる能力であり、難しいと言えます。
やはり、自らもそのビジネス・イノベーションの価値に共感した「経営幹部層」が、特長である実務実行者としてのビジネス・コンピテンシーを発揮して、新事業推進にも協力して、組織的に社内外を纏めて新しい価値創造を含むビジネスを実現し成功させていくことが企業の継続成長にとって重要だと言えます。
- 著者紹介
斉藤 実 (さいとう みのる)
株式会社ネクストエデュケーションシンク 代表取締役
哲学教育系雑誌編集長を経て、アスキー入社。PC技術マニュアル編集長、教育メディア編集長を経て、科学的な人財育成・DX手法の人財アセスメント開発会社のネクストエデュケーションシンクを起業し、代表取締役。
「本郷人間塾™」理事長。日本イノベーション融合学会専務理事。ITSS認定コンサルタント/能力診断開発コンサルタント/人財育成コンサルタント/認定診断分析マスターアセッサー
<ご参考動画>
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